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#1 発足のきっかけは「子どもの健康」  福島ファイヤーボンズが見据えるもの

ページID:0054703 更新日:2022年11月10日更新 印刷ページ表示

■福島スポーツエンタテインメント株式会社
代表取締役社長 西田創さん
■福島ファイヤーボンズ
アスレティックトレーナー 三田泰成さん

 

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福島県をホームタウンに戦うプロバスケットボールチーム、福島ファイヤーボンズ。試合開催日になると、宝来屋 郡山総合体育館の周りにはシンボルカラーである「フクシャパープル」をまとったブースター(ファン)の姿が目立ちます。2021-22シーズンにはBリーグ開幕以来初のB2プレーオフ進出。B1昇格への道筋が見えてきたとあり、ファンの熱気は高まり続けています。

 

クラブの始まりは、東日本大震災。子どもたちが外で遊べず運動の機会が減ってしまったことから、体を動かす場としてスタートしたバスケットボール教室がきっかけでした。その後、子どもたちに夢や希望を与える存在として2013年5月に正式にチームとして発足した歴史があります。

 

今年で設立9年目。設立時の思いは今、子どもたちのみならず全世代を見据えた取り組みとして広がってきています。プロスポーツチームとしての存在価値を地域住民の健康づくりに役立てようとするその思いを聞きました。

 

プロとしてできることは、体を動かす場を提供すること

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10月の陽も落ち切った午後7時。開成山公園内にあるミューカルがくと館の一室に、運動着姿の人たちが次々に集まってきました。

 

参加者の前でマットを敷き、穏やかな口調で指示を送るのは、ファイヤーボンズのアスレティックトレーナーとして選手の身体のケアを担当する三田泰成さんです。その指導に頑張ってついていく人、思うように体勢が維持できず苦笑いしてしまう人。レベルはそれぞれですが、汗をにじませながら浮かべるその表情には充実感があります。

 

ファイヤーボンズの運営会社である「福島スポーツエンタテインメント株式会社」が2020年に郡山市と連携してスタートさせた、「こおりやまスポーツイノベーション事業」。ストレッチやトレーニングを通じて楽しく運動してもらおうと、週に2日、体を動かす教室を開いています。

 

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「体と会話をするように楽しんでもらいたいと思いながら、メニューを考えています。人によっては辛いメニューもあるみたいで、ボンズのファン向けに教室をした時には『鬼の三田トレ』と言われてしまいました(笑)。もちろん無理はしてもらいたくないのですが、ちょっとしんどそうだな、と思って見ていても皆さん黙々と続けていて、途中でやめる方もいないのでありがたいですね。」

 

講師陣は三田さんのほか、ヨガやフィットネスのトレーナーなど計5人。全員、郡山市近郊で活躍するメンバーです。「この地域で暮らす方の生活特性を熟知しているからこそ提供できる運動メニューがある」という三田さんも、郡山での生活を始めてすでに7年目。「福島はすっかり第二の故郷」と話します。

 

「子どもたちの運動不足解消のためにできたクラブとして、自分には何ができるのかをずっと考えてきました。福島県民は肥満率が高いとか、運動不足だとかいう話はもちろん聞いていましたが、実際に関わってみると皆さん意欲はもっていて、体を動かす機会や場所がないだけでは、と感じます。このプログラムに参加することが、運動を始めるきっかけになる方が少しでも増えたらいいなと思っています。」

 

小さい取り組みでも、継続することに意味がある

 

この事業は、郡山市外の企業が市に寄せた「企業版ふるさと納税」を活用したもの。地域住民向けの運動教室のほか、部活の出張授業やスポーツ指導者向けの講習会など、クラブが持つスキルを地域に還元する取り組みが予定されています。「スポーツを通じた地方創生プロジェクト」として内閣府から寄附対象事業の認定を受けています。

 

こうしたサイクルを郡山市に提案し、形にしたのが、福島スポーツエンタテインメントの社長である西田創さんでした。

 

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「健康というものは一日で成るものではなく、一歩ずつ積み重ねていくことで得られるもの。こうした事業は一回きりであれば誰にでもできますし、ボランティアでやることもできる。でも、継続してやっていくためにはみんながハッピーにならなきゃいけません。参加者が少なかったとしても、とにかく少しずつでも小さくてもいいので、継続して何回もやる。そのために考えたのが、ふるさと納税や寄附をベースにしたこの枠組みです。」

 

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(写真:ホーム戦では試合前後も常に表に立つ西田さん。ファンとの交流は欠かしません)

 

西田さんは元ラグビーのトップリーグ選手という生粋のスポーツマン。現役引退後、東京にある福島スポーツエンタテインメントの親会社で組織コンサルティングに携わる一方、当時関東大学ラグビー対抗戦グループのBグループに甘んじていた母校・立教大ラグビー部のコーチングに参画し、Aグループ昇格に貢献しました。その実績を買われ2021年に福島スポーツエンタテインメントの社長に就任。競技は異なるものの元選手であるという経歴が、クラブ成長の原動力の一つとなっています。

 

楽しみながら「歩く」仕掛けをつくりたい

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出身は福岡。大学は東京。都会暮らしが長かった西田さんにとって、福島で暮らす人々の生活スタイルには驚きがあったといいます。

 

「皆さん、びっくりするぐらい、歩きませんよね。」

 

歩いて5分の距離ですら車で出かけてしまう極端な車社会。ファンからの要望で最も多いのも駐車場の増設だといいます。しかし、郡山市のホームアリーナである宝来屋 総合体育館の来場者は多くが市内在住者。子どもの健康づくりをきっかけに発足したクラブとして、なんとかしなければならない。ファンの健康のためにも、なんとか歩いてもらえるような動機をつくれないか。

 

そのアイディアはすでに浮かんでいると言います。

 

「例えば、会場から徒歩30分以内の方が観戦にいらっしゃる時には中継ポイントのようなものを設けて、歩いて会場に来たら応援グッズがもらえる、選手と交流できる、そんな仕掛けができれば面白いですよね。

僕たちが何かをしたからといって、歩いて移動する人が一気に増えることはないでしょう。それでも、楽しみながら歩きたくなるような、体を動かしたくなるようなきっかけを提供して、地域の皆さんの足腰がずっと元気でいてもらえる状態をつくりたいです。」

 

勝てばストレス軽減?スポーツ応援がもたらす効果

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スリーポイントシュートが決まって喜ぶ。フリースローが外れて悔しがる―。

 

スポーツを応援することで得られる高揚感は、何にも代えがたいもの。2022年現在、新型コロナウイルス感染症対策で声を出しての応援はできませんが、スポーツ観戦がストレス軽減やメンタルケアに効果的であるという調査結果も出始めているといいます。

 

「まだ正式なデータとして公表できるほどの統計は取れていませんが、郡山市と合同でファンに協力してもらって調査したところ、勝ち試合を見たら明らかにストレス値が下がる傾向があることがわかりました。

 

面白いのは、負け試合を観た時のストレス値は、観戦しない時のストレス値とあまり変わらないこと。だからやっぱり、勝たなきゃいけないんです。負けたらストレスになるとは言わないまでも、思い入れが強いからこそ勝ったら悩みも吹き飛ぶ。声を出した応援ができるようになった時にどんなデータが取れるかも楽しみですね。」

 

子育て世代にも試合を楽しんでもらえるよう、会場には子どもが思い切り体を動かすことができる託児所が設けられていたり、乳がん検診を啓発するピンクリボン運動のブースがあったりなど、今では試合会場そのものが「健康への意識を変える」きっかけの場になりつつあります。地域の健康づくりにおいてプロスポーツチームが担う役割を、西田さんはどのように描いているのでしょうか。

 

「プロスポーツ=健康というのは直結しやすい。2022年9月には福島県立医大と協定を結び、選手のけがの状況などのデータを共有して子どものスポーツに伴うけが予防の研究などで協力していく予定です。ひとつずつではありますが、我々のようなプロスポーツチームが地域の健康づくりを先導していけるような存在になっていきたいです。」

 


福島ファイヤーボンズ公式サイト<外部リンク>

2022年度こおりやまスポーツイノベーション事業<外部リンク>

ココカラこおりやま!健康メニュー「運動(スポーツ)をする・見る」

ココカラこおりやま!健康メニュー「運動ができる場所(施設等)」


<動画>ショートムービーをご覧ください。


2022年11月10日公開

Photo by 佐久間正人、杉山毅登(佐久間正人写真事務所<外部リンク>

Interview by 高橋晃浩(マデニヤル<外部リンク>

Text by 五十嵐秋音(マデニヤル<外部リンク>

Movie by 杉山毅登(佐久間正人写真事務所<外部リンク>