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【健康コラムVol.4】ストレスとの付き合い方
皆さんこんにちは! 保健所保健・感染症課 精神・難病担当です。
「ココカラこおりやま!」のコラムを今回担当させていただきます。
さて、今回のテーマは、新年度に向けて「ストレスとの付き合い方」をテーマにお伝えします。
少しずつ暖かくなり春の訪れを感じ始める季節となりました。
もうすぐ新年度となり、1年の中で一番変化がある時期になります。それは、最もストレスが高まる時期とも言えます。
【ストレスとは】
そもそもストレスとは、何らかの有害な刺激(ストレッサー)が外から加わりその状況を不快に感じる状態のことです。その結果、身体やこころ、行動で表れるものがストレス反応です。
・身体の反応 |
不眠や食欲減退、便秘などの症状が代表的です。 |
・こころ(心理面)の反応 |
イライラや不安、落ち込みなどがあります。 |
・行動面での反応 |
お酒やタバコの量の増加、落ち着かないなどがあります。 |
ストレス反応は、個人差があり同じストレッサーに晒されてもその人の性格や体質、考え方などによっても表れる反応が違います。
そのストレッサーを感じてから、ストレス反応が表れるまでの流れを示したものが図1になります。
図1 ストレス反応
日常のさまざまなイベントはストレスを生みます。
その強さを数量的に示したのが以下の表1「ストレス・スケール」(社会的再適応評価尺度)になります。
順位 |
ライフイベント |
ストレス強度 |
順位 |
ライフイベント |
ストレス強度 |
1 |
配偶者の死 |
100 |
23 |
子供の巣立ち |
29 |
2 |
離婚 |
73 |
24 |
親戚とのトラブル |
29 |
3 |
夫婦別居 |
65 |
25 |
個人的な成功 |
28 |
4 |
刑務所への収監 |
63 |
26 |
配偶者の就職・退職 |
26 |
5 |
近親者の死亡 |
63 |
27 |
進学・卒業 |
26 |
6 |
本人のけが・病気 |
53 |
28 |
生活環境の変化 |
25 |
7 |
結婚 |
50 |
29 |
個人的習慣の変化 |
24 |
8 |
失業 |
47 |
30 |
上司とのトラブル |
23 |
9 |
夫婦の和解 |
45 |
31 |
勤務時間や労働条件の変化 |
20 |
10 |
退職・引退 |
45 |
32 |
転居 |
20 |
11 |
家族の健康変化 |
44 |
33 |
転校 |
20 |
12 |
妊娠 |
40 |
34 |
余暇時間の変化 |
19 |
13 |
性生活の困難 |
39 |
35 |
教会活動の変化 |
19 |
14 |
新しい家族の加入 |
39 |
36 |
社会活動の変化 |
18 |
15 |
仕事上の変化 |
39 |
37 |
1万ドル未満の借金 |
17 |
16 |
家計上の変化 |
38 |
38 |
睡眠時間の変化 |
16 |
17 |
親友の死 |
37 |
39 |
家族が集まる機会(回数)の変化 |
15 |
18 |
配置転換 |
35 |
40 |
食習慣の変化 |
15 |
19 |
口喧嘩の回数の変化 |
35 |
41 |
長期休暇 |
13 |
20 |
1万ドル以上の借金 |
32 |
42 |
クリスマス |
12 |
21 |
担保や貸し付けの損失 |
30 |
43 |
軽微な違法行為 |
11 |
22 |
職場での昇進・降格 |
29 |
(Holmes&Rahe:J Psychosom Res,1967;11:213-8)
1年間のストレス強度の合計点数が300点以上の場合は、「病気になるリスクが高く」、150点から299点までは、「病気になるリスクは中ぐらい(300点以上の人に比べると30%ほど低い)」、150点未満は「リスクは低い」とされています。
この表をみると結婚や妊娠、進学などおめでたいことや嬉しいことも含まれており、悪い出来事だけがストレスの原因になるとは限らないことを示しています。
ストレス・スケールは、さまざまな変化をまとめたものとも言えます。年度が変わる時期は、さまざまな変化が生じる時期です。
自分自身には大きな変化がなくても、家族が進学して起床時間やタイムスケジュールが変わった、職場の人事異動で新しい人が入ってきたなど間接的な変化に晒されることもあります。
そのような変化があったときには、ストレスを跳ね返すような「ストレス解消(発散)」が必要になります。そして、ストレスが軽度なうちに対処することが重要です。
【ストレスに対処する】
ストレスを対処するための行動を「コーピング」と言います。
コーピングにはさまざまな種類があり、代表的なものとしては、問題への対処を目的とするコーピング(問題焦点型コーピングや情動焦点型コーピングなど)と問題から離れ発散させるコーピング(ストレス解消型コーピングなど)があります。
状況に応じてそれぞれを使い分けることや、併用することで問題に対処する行動を適切に選択し実行していくことが必要です。
今回は、問題から離れ発散させるコーピング(ストレス解消型コーピング)をご紹介します。
ストレス解消型コーピングは,問題から離れることや、ストレスの緩和行動(落ち着ける環境に身を置くことなど)を取る行動で、大きく分けると気晴らし型とリラックス型があります。
気晴らし型は、ストレスから離れ、他のことで気分を晴らし、ストレスを緩和する方法です。例えば趣味に没頭したり、外出したり、また運動や読書などで気分転換を図るなどがあります。
平日のストレスを休日の気晴らし型コーピングで発散し、翌週からまた業務に励むという行動をとっている方は多いのではないでしょうか。
リラックス型は、心身をリラックスできる状態に整えて、緊張状態を和らげる方法です。ヨガやマッサージ、深呼吸などがあります。それ以外にも自分があらかじめリラックスできる環境を準備しておいて、心身に負担を感じたときにその場に身を置くことも有効です。その際、無理にリラックスしようとは思わないことが何よりも重要です。
自分にあったコーピングがある程度見つかったら、次は、コーピングリストを作成することをおすすめします。コーピングリストとは、ストレスの軽減や解消ができるための方法をまとめたものです。
リストをまとめることでストレス対処法が明確になり、ストレスの種類や状況に応じて適切な行動をとることが可能になります。
1.自分が抱えているストレスがどのようなものか認識してみましょう |
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自分自身が何に対してストレスを感じているかを書き出してみましょう |
2.自分のストレスがわかったら、その対処や気晴らしの方法を思いつくまま書き出してみましょう |
数は多ければ多いほど良いので、100個を目標に書き出してみましょう ※ストレス発散方法や気晴らし、自分や周囲の環境にアプローチする方法でも大丈夫ですが、過度な買い物やアルコール、タバコなど自分や周りの健康などに害のある方法は控えましょう。 |
3.実際にコーピングを試してみての振り返りをしてみましょう |
どの対処方法がストレスに対し効果的であったかを検証しましょう ※「友達に相談する:70点」、「公園を散歩する:50点」など、行動ごとに点数をつけて点数化すると、その行動の自分への効果が比較しやすくなるのでおすすめです。 |
コーピングリストは、状況ごとに適切な対処方法を選択し実施することが大切です。
対処法をリストとしてまとめておくと、ストレスが生じた際にもスムーズに対処行動に移す意識が芽生え、行動化しやすくなります。
また、コーピングリストは、お金と時間のコストにも気をつけながら作成しましょう。例えば、映画やライブに行くなどの行動は、それなりに時間とお金もかかりすぐに実行できる行動ではないので、なるべく「いつでもどこでも」すぐにできるコストのかからないコーピングをたくさん用意して実践しましょう。
ストレスは、日常生活では避けられないものです。ストレスとの付き合い方として、自分がどのようなストレスを感じているかを確認しながら、状況に応じて適切に対処していきましょう。
ストレスとの付き合い方を学んで、今年が皆さんにとって実りある1年になることを願っています。
・厚生労働省 「こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」<外部リンク>