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#6 子どもたちの「心の居場所」チャイルドラインこおりやま

ページID:0085216 更新日:2023年8月25日更新 印刷ページ表示

チャイルドラインこおりやま

 

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郡山市内の民家の一角に事務所を構える「チャイルドラインこおりやま」。ここは、悩みや自分だけでは抱えきれない思いを訴える子どもたちからの電話やチャットの相談が集まる、「心の居場所」です。理事を務める3人を訪ね、お話をうかがいました。

 

子どもたちへ。

悩みや誰かに話したいことがある時、電話やチャットで話を聞いてもらえる窓口があることを知っていますか?どんなことでもいいんです。名前も年齢も、言わなくて大丈夫。あなたの秘密は守られます。この記事では、どんな人たちがどんな思いで話を聞いてくれるのかをご紹介します。

 

お父さん、お母さんへ。

チャイルドラインこおりやまには、長年子どもたちの静かな声に耳を傾けるスタッフがいます。子どもたちが抱える悩みに寄り添おうとするスタッフの姿から、多感な時期の子どもたちと接する時のヒントが見つかるかもしれません。

 

電話とチャットで子どもたちの悩みに寄り添う

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チャイルドラインは、子どもの悩みに寄り添う相談ダイヤルです。1970年頃から欧米で始まりました。1998年に東京でも開設されると日本各地に活動が広まり、今では全国にネットワークを持っています。郡山市を拠点とするチャイルドラインこおりやまは、東日本大震災後の2012年に開設。現在は、ボランティアの受け手15人が電話とチャットで子どもたちの話を聞いています。

 

いじめ、不登校、虐待、貧困、性の悩み―。受け手はそれらの問題を学んだうえで、子どもたちの思いをどう聴き、どう寄り添うかの経験を積み、考え抜いてきた人ばかりです。悩みを抱える子どもの目線に近づくために、いじめや不登校の過去がある人から当時を振り返ってもらい、大人にどうしてほしかったかを聞く取り組みも行っているのだそう。

 

理事長の大岡桂子さんは、2012年の立ち上げ当初から運営に携わっているメンバーの一人です。現在は子どもたちの電話に応じるのではなく、受け手のフォローをしたり、子どもたちにチャイルドラインを知ってもらう活動をしています。

 

チャイルドラインこおりやまでは、より多くの子どもたちの思いに寄り添うために、電話・チャット窓口の存在を知ってもらうためのカードを、県内すべての小中学校、特別支援学校、高校に配布しています。

 

「若い人たちと話をすると、『財布にカード、入れてました』って声をよく聞くんです。電話をかけないまでも、何かあったらかけるところがあるっていうお守りにしてもらっていたんだろうなぁって思います」

 

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あなたが感じる心の葛藤は成長のために大事なこと

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理事長の大岡さん

 

2022年に全国のチャイルドラインに寄せられた電話とチャットの着信数は、約20万件。
「顔が見えないからこそ、打ち明けづらい悩みも話せるのかもしれません」と大岡さんは話します。

 

チャイルドラインでは、子どもの声や意見が大切にされ、活かされる社会になるよう、電話やチャットの内容を、誰の相談かわからないようにまとめたうえで分析しています。最も多い相談内容は、自分の心に関すること。

 

自信がない、自分を傷つけてしまう、将来が不安、友達との人間関係がうまくいかない。

 

きっと今この時も、苦しんでいる子どもたちは数多くいるでしょう。
そんな中でも、チャイルドラインにモヤモヤを打ち明けた子どもたちからはこんな声が寄せられているそうです。

 

「話を聞いてもらうだけで安心できた」

「気持ちにゆとりができた」

 

最初は暗い声だったけれど、話をしていたら少し明るい声に変わったということも。

 

「話をすると、自分の中で少し整理ができると思うんです。大人だって、アドバイスがほしいのではなく、ただ悩みを聞いてもらいたいだけという時がある。チャイルドラインの受け手は「ちょっとこうしたらいいんじゃない?」とか、「それはいけないよ」といったようなお説教はせず、じっと話を聞く姿勢を大事にしています。学校でもない、おうちでもない、気軽に立ち寄れる『心の居場所』として、電話をかけてくれた子どもたちに寄り添うことを大事にしています」

 

理事の尾形ゆり子さんは、受け手のスタッフと話をする中で、最近の子どもたちの様子をこう捉えています。

 

「学校では自分のキャラをつくらなきゃいけないとか、空気読まなきゃとか。そうやって周りに合わせているうちに本音が出せなくなっている子どもたちがたくさんいるように感じます。でも、たった一人のそのままのあなたが大事なんだよって伝えたい。あなたが今感じているその心の葛藤や感情は成長していくために大事なこと。自分を責めなくていいと思うんです」

 

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理事の尾形さん

 

親は子どもの雑談を聞いてあげて

 

長い夏休みが終わる時期は、「学校に行きたくない」という相談が特に増えるそうです。そう訴える子どもに、親はどう向き合えばいいのか。理事を務める3人も、自分の子どもとの接し方で深く悩んできた過去があります。大岡さんの息子さんは不登校でした。

 

「不登校を経験した当事者の方の話です。子どもに『学校に行きたくない』と言われたら、親は『なんで?』と問い詰めるのではなく、『ふーん』と生返事しときなさい、と。

 

確かにそうだな、と思いました。子どもが学校に行きたくなくなる時って、コップの水があふれている状態なんです。つまり、心のエネルギーが切れてしまっている。だから、ゆっくり休むことが大事なのですが親ってこういう時、一生懸命子どもを元気にさせようとしてしまう。私もそうでした。そこですれ違いが起きてしまうんです。子どもは子どもで考えているから、話したくなる時を待つのも親の役目なんじゃないかな、と今では思えます」

 

休ませなければいけないと感じたら、話したくなる時を待つ。その一方で、普段から家族で「雑談」をすることが、多感な時期の子どもの心を解きほぐすことにつながるといいます。

 

「自分の正体が自分でもわからない感情にとらわれている子って多いと思うんです。チャイルドラインでも、なんてことのない雑談をしていたらいつのまにかモヤモヤが吐き出せて、すっきりできたという子は少なくありません。

 

モヤモヤを溜めてしまうと、自分の気持ちを追い詰めてしまいがちになります。忙しくて家で雑談をする時間などないという親もいるのかもしれませんが、ぜひそうした時間をとってほしいです」

 

チャットでの相談もスタート

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悩みを抱える子どもには、寄り添ってくれる理解者と居場所が必要。それが大岡さんの持論です。子どもたちとの出会いの機会を増やすべく、チャイルドラインこおりやまは2023年7月にチャットでの相談をスタートしました。悩んでいる子どもが減っているわけではないのに、他の部屋に家族がいると電話がしづらい、自由に使える固定電話が家にないなどの理由で着信件数が減っていること、そして電話よりチャットのほうが思いを伝えやすいと感じる子どもたちが増えてきているためです。

 

子どもたちのいまを見つめ寄り添い続けるチャイルドライン。日ごろから子どもたちの「素」に近い思いに触れる立場として担うもう一つの役割は、子どもたちの声を社会に発信していくことです。大岡さんは教育委員会に招かれて講演をする機会もあり、日ごろから聞いている子供たちの声を伝えています。

 

「子どもたちがどういう状況にあるのかを知り、大人はどういう社会を作っていかなきゃいけないかを考える機会を、今後も増やしていきたい。そのことで、子どもたちの心を守れる社会に少しでも近づくためのお手伝いができれば、と思っています」

 


チャイルドラインこおりやま<外部リンク>

フリーダイヤル(お金はかかりません):0120-99-7777

開設時間:16時00分(夕方4時)~21時00分(夜9時)

※チャイルドラインこおりやまは水曜のみ開設。それ以外の日は、他の地域で活動するチャイルドラインの受け手に話を聞いてもらえます。


 

<動画>ショートムービーをご覧ください。

2023年8月25日公開

Photo by 佐久間正人(佐久間正人写真事務所<外部リンク>

Interview by 片倉菜々(マデニヤル<外部リンク>

Text by 五十嵐秋音(マデニヤル<外部リンク>

Movie by 杉山毅登(佐久間正人写真事務所<外部リンク>