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#22 市民にウェルビーイングな生き方を提案。医療の先を見据えたおおまちてらすの取り組み

3 すべての人に健康と福祉を
ページID:0166513 更新日:2025年12月24日更新 印刷ページ表示

地域交流施設「おおまちてらす」

 

取材を受けてくれたおおまちてらすの椎名さんと二瓶さん

 

心や体の健康だけでなく、家族や知り合い、地域社会とも良好かつ健康的な関係の構築を追求する、ウェルビーイング(Well-being)という考え方。ここ数年、国の基本計画や地方自治体の政策目標のなかでこの言葉を目にする機会が増えました。郡山市でも、次の100年を見据えたウェルビーイングなまちづくりを推進するため、2025年4月、政策開発部未来創造課に「ウェルビーイング推進係」ができました。

 

2025年4月、郡山市の中心市街地にオープンした「おおまちてらす」は、このウェルビーイングの考え方のもと生まれた、星総合病院が運営する複合施設です。赤ちゃんから高齢者まで、すべての市民がさまざまな角度からウェルビーイングな生き方を実現できる施設が入っています。

 

 

各施設がパズルのようにつながり機能する施設

 

おおまちてらすは、JR郡山駅から北西に10分ほど歩いたところにあります。ビルは地上7階建て。地域の幹線道路である県道57号線(旧国道4号線)沿いに建つ、まちの新しいランドマークです。

 

地域交流施設おおまちてらすの外観

 

おおまちてらすの責任者を務める椎名亨さんは、おおまちてらすの開設にあたって星総合病院が掲げたテーマをこう語ります。

 

「この地域にいる皆さん一人ひとりがその方らしく生き生きと暮らしていくうえで、医療の立場から何ができるのか。それが、おおまちてらすの最初の、そして最も大きなテーマでした。

時代が変革するなか、医療は地域が元気であってこそはじめて「価値」を持ちます。医療が地域を支え、地域が元気になることで、医療を含めた地域の産業が成り立っていくもの。その考え方のもと、医療に一歩先の時代を見据えた発想を組み合わせました」(椎名さん)

 

この「一歩先の時代を見据えた発想」とは、入居する施設がそれぞれ単独で市民の健康に貢献しながら、他の施設とジグソーパズルのようにつながり合い、医療につなげていく仕組みのこと。では、どんな施設があり、どんな取り組みをおこなっているのでしょうか。

 

 

6つのキーワードで健康的な生活をサポート

 

事業を組み立てるうえで掲げたキーワードは、「食」「運動・スポーツ」「趣味にまつわる活動」「子育て」「健康管理」「生き方・暮らし方」の6つ。このキーワードに沿った施設が階ごとに集まりました。病気のあるなしに関係なく、すべての人が気軽に利用できます。

 

まず、1階は「食」。“地域とつながるレストラン”をコンセプトにしたレストランPons(ポンス)があります。管理栄養士がマネージャーとなり、食と医療の知見を活かしながら、おいしさと健康の両方に配慮したメニューが提供されています。

 

「Ponsは、“地域と繋がるレストラン”をテーマに、地域の生産者、調理人、サービススタッフ、更にはここで料理を召し上がるお客様まで、地域の食に関わるすべての方にとって晴れの舞台となるようなレストランでありたいと考えています」(椎名さん)

 

また椎名さんは、地産地消の発想のもと、地域の食材や食文化にも光を当て、郡山ならではの食の豊かさも発信したいと語ります。

 

1階にあるレストランポンスの内観

 

2階は「運動・スポーツ」と「趣味にまつわる活動」。自分の体を探求できる施設が2つ入っています。一つは多目的スポーツ施設のSPOLABO(スポラボ)、もう一つはものづくり工房 A/C Base Pro(エーシーベースプロ)です。

 

SPOLABOには、オリンピックなどの国際大会が開かれる競技場と同じ素材を採用した競技用スパイクも使用可能な50mレーンや、野球のピッチングマウンド、各種トレーニングマシンなどがあります。競技で本格的な活躍を目指す人向けの実践的な動作の分析から、市民の日々の体力維持・増進、ケガの予防につながる体づくりまで、目指したいスポーツ活動に合わせたトレーニングに、インストラクターの指導のもと取り組めます。

 

スポラボのトレーナーと1対1でトレーニングする様子

 

一方、A/C Base Proは、木工や鉄工、陶芸や裁縫、金属加工、革細工など、さまざまなものづくりが体験できるシェア工房です。趣味を楽しむ一般市民からプロとしてものづくりに関わる方まで、すべての人の「つくりたい」に応える道具や機械が揃っています。市民を対象としたものづくり講座も開催されています。

 

工房でかご作り講座を行う様子

 

SPOLABOとA/C Base Proの運営をサポートする二瓶健司さんは、2つの施設の役割をこう語ります。

 

「全身を動かす運動と手先を動かす作業、その両方の活動を通して、自分の能力や可能性を知り、能力開発につながるきっかけの場としています。いずれは2つの施設で共通した事業を展開したいとも考えています」(二瓶さん)

 

二瓶さんの言葉を受け、椎名さんもこう続けます。

 

「SPOLABOとA/C Base Proの間には壁がありません。だから、それぞれの活動の音が聞こえるし、動きも見える。もの作り工房で何かを作っていたら、その匂いも伝わってくるでしょう。そうして五感すべてで楽しめるのが2階の大きな魅力です」(椎名さん)

 

 

いい意味でのおせっかいになるようなサービスを

 

3階は「子育て」。郡山市認可保育所のおおまちてらす保育園・一時預かり、放課後児童クラブのキッズベースおおまち、児童福祉施設のほしくま児童家庭支援センター、そして、家庭での養育が難しい乳幼児期のこどもたちが過ごす福島県立乳児院の4施設が入っています。世代も育った環境も異なるこどもたちが同じフロアのなかで過ごします。

 

とりわけ特徴的な存在が、県の委託を受けて開設された福島県立乳児院です。家庭的な事情を考慮し閉鎖的な環境になりがちな乳児院ですが、ここではあえてガラス張りの部屋にしたほか、保育園や学童クラブに通うこどもたちと分け隔てなく遊べる空間も設けています。

 

「乳児院のこどもたちにも、ここに集う地域のこどもたちとふれあい、こども同士だからこそ生まれるつながりを感じて欲しい。そんな想いが込められています。2階に下りてスポーツを体験したり、施設を訪れた人と交流したりすることもあるでしょう。地域の次代を担うこどもたちへの支援は、まちづくり、地域づくりに欠かせないもの。地域全体でこどもを育てる空気がここから醸成できればと思っています」(椎名さん)

 

ホールであそぶ保育園児たち
広々としたスペースで遊ぶ保育園のこどもたち。時間帯によっては乳児院のこどもたちも遊びに混ざります。

 

4階は「健康管理」。検診センターとクリニックの機能を持つヘルスプロおおまちが入っています。

 

「私たちは、年に1回の健診を、仕方なく行くものではなく、自分の健康、あるいは生き方を考えるきっかけにしてほしいと考えています。そこで、健診センターには保健師を多数配置し、病気以外のお困り事までアンテナ高くヒアリングし、健康づくりにつなげています。ヒアリングのなかで“運動不足で困っている”という話になれば2階のSPOLABOと連携できますし、食生活に課題を感じているならば1階のレストランとも連携できる。もちろん、検査データは星総合病院とつながっていますので、病気が見つかれば病院との連携も可能です。従来の健診から一歩踏み込み、いい意味でのおせっかいになるような、そんなサービスを提供しています」(椎名さん)

 

この連携は、冒頭でご紹介した「一歩先の時代を見据えた発想」そのもの。心と身体、人と地域がつながり合って健康な姿を目指すウェルビーイングの考え方が、おおまちてらすのなかで形になっているのです。

 

ヘルスプロおおまちの職員たち

 

 

市民全員が楽しめる健康のよりどころに

 

5階・6階は「生き方・暮らし方」のフロア。シニア向け賃貸住居のおおまちてらすレジテンスです。シニア向けといってもいわゆる介護施設ではなく、あくまで賃貸住宅。元気なうちにここに移り住み、2階で趣味や体力づくりに励んだり、3階にいるこどもたちの面倒を見たり、1階のレストランで健康に配慮した食事を楽しんだり。駅前にも近いので、ときには街に出て買い物をしたり、地域の活動に参加したりもできます。そんな、これからの時代のアクティブなシニア像をイメージした大小の居室が全46戸あります。

 

地域に新しい健康のかたちを提案するおおまちてらす。椎名さんと二瓶さんは、ここからどんなメッセージを市民に発信しようと考えているのでしょうか。

 

「私たちが考えているのは“場づくり”です。それぞれの施設を利用する人の楽しい様子が他の施設の利用者にも波及し、訪れる人みんなが楽しく健康になる。そんな、市民の健康のよりどころにしていきたいと思っています」(椎名さん)

 

おおまちてらす責任者の椎名さん
椎名亨さん

 

「今年は星総合病院の前身である星医院が創設されてから100周年の節目にあたります。この100年で私たちが培ってきた医療をベースに、今はまだ医療が必要ない方への健康にも貢献できるような、次の100年に向けたサポートを、ここから広めていきたいと考えています。いずれはここが地域資源の一つとなり、郡山市全体が盛り上がるきっかけになればうれしいですね」(二瓶さん)

 

おおまちてらすの二瓶さん
二瓶健司さん

 

従来の病院や医療の現場は、自らが、あるいは家族や親しい人が病を患わなければ触れることの少ない世界でした。しかし、人生100年時代といわれて久しい今、医療と私たちの関わり方も変化し、心や体の異変を感じる前に医療に触れ自らを労わることが当たり前の時代となりました。そんな今を生きる私たちの健康を支え、ウェルビーイングな生き方に導いてくれる施設が、おおまちてらすには揃っています。

 

スポラボのみなさんでガッツポーズ

 

 

*椎名さんと二瓶さんが健康のためにしていることは?

 

椎名さん「正直、これまでは何もできていませんでした。しかし、おおまちてらすのオープンを機に、私自身も2階のSPOLABOの初心者コースに入会しました。これからしっかり体づくりをして、健康で長く健やかに暮らせるように取り組んでいきたいです」

 

二瓶さん「毎朝のウォーキングです。また、みなさんと一緒に体を動かすことが、自分の体のメンテナンスにもつながっています」

 


<動画>ショートムービーをご覧ください。

2025年12月24日公開

Photo by 佐久間正人
​Movie by 杉山毅登
Text by 高橋晃浩
マデニヤル<外部リンク>