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#24 子育てに不安を持つお父さん・お母さんのよりどころに。本宮いどばた会の子育て支援とは
今回ご紹介する本宮いどばた会は、本宮市の方だけでなく、ほかの市町村にお住いの子育てファミリーも交流できる広場を運営しています。
本宮いどばた会
代表 石塚浩子さん
清水睦子さん

東洋経済新報社が毎年発表する市町村別の『住みよさランキング』においてこれまで何度も福島県内1位に輝くなど、住環境が魅力の本宮市。郡山市のベッドタウンとして若いファミリーの転入も多く、子育てしやすいまちとして人気を集めています。しかし、見知らぬ土地での子育てでは気軽に協力が得られる親族や知人が近くにいないケースもあり、大きな負担を感じてしまうお父さんお母さんも少なくありません。
そこで本宮市では、まちの中心部に、こどもが楽しく遊べるだけでなく、親同士・こども同士の交流や子育てに関する相談・情報共有などができるスペース「さくらんぼひろば」を開設しています。その運営に携わるNPO法人本宮いどばた会の石塚(いしつか)浩子さんと清水睦子さんに話を聞きました。
子育てに悩んだ経験を持つスタッフがサポート
さくらんぼひろばは、JR本宮駅から歩いて約5分、かつて商店として使われていた建物の2階にある、未就学児とその保護者を対象とした施設です。市民は登録のうえ無料で、市外の方は年額500円で利用できます。国の地域子育て支援拠点事業を活用して本宮市が整備し、約20年にわたって地域のこどもの成長を支えてきました。
さくらんぼひろばでは月に一度、0歳児を対象とした「親子うんどうあそび」を開催しています。専門家の指導のもと、ボールや布などを使って赤ちゃんの興味を引き出しながら体を動かす、約40分のプログラムです。

取材の日に参加していたのは、市内各地からやってきたお母さんたち。「私はこの子が初産で」「うちはこの子で2人目なんです」など、お子さんのことも交えながら、同じ時間に集まったお母さん同士の会話が自然に生まれます。プログラムの後には発達相談などができる交流会もおこなわれます。

代表を務める石塚さんは、さくらんぼひろばが今の場所で運営される前から子育て支援に関わってきました。そのきっかけとなったのは、3人のお子さんを育てたご自身の育児体験です。
「お出かけをしたときに下の子が泣いたりすると、自分がその世話にかかりきりになり、ほかのこどもの世話ができなくなってしまったり、うまくあやせなかったりして、お出かけを楽しめない悩みがありました。そんなとき、小規模保育や放課後児童クラブなどでこどもたちのお世話をする子育て支援員の研修があることを知り、受講したんです。最初は我が子のためと思って参加しましたが、研修が進むうちに、お母さんが笑顔でなければこどもも笑顔になれないことに気がつき、お母さんたちを支援できる存在になりたいという気持ちが大きくなっていきました」(石塚さん)

石塚浩子さん
清水さんは、石塚さんとは違った子育ての悩みから、10年ほど前に本宮いどばた会に参加しました。
「結婚を機に本宮市に来たので地域とのつながりがなく、育児のコミュニティにうまく溶け込めずにいました。一方では、地域をもっと知りたい、家庭や子育てだけの世界から一歩外に出てみたいという気持ちもありました。そんなとき、こどもの幼稚園のママ友に誘われて、本宮いどばた会のスタッフ講習会に参加したのがきっかけです」(清水さん)

清水睦子さん
石塚さんも清水さんも保育経験ゼロでのスタート。現在20名ほどいるスタッフのなかには保育士資格を持つ人もいますが、ほとんどは子育ての実体験からこの活動に興味を持ち、運営に携わるようになった仲間だといいます。子育てに悩んだ経験があるスタッフがいるからこそ、お母さんたちの気持ちに共感し、ベストなサポートを提供できているのです。
3つの事業で子育てを多角的に支援
本宮いどばた会の子育て支援活動は、さくらんぼひろばの運営に加え、こどもの一時預りや送迎を担うファミリーサポート事業、未就学児向けに家庭訪問型で子育てを支援するホームスタート事業の3つで構成されています。
「ファミリーサポートでこどもを一時的に預けたい場合、その理由を限定してはいません。自分の体を休めるためにこどもを預けたいなら、それも正当な理由だと思います。自分が楽になることに後ろめたさを感じないで良いと思うんです」(清水さん)
「先日は、一時預かりを利用する理由を“夫婦のデート”とおっしゃった方がいました。もちろん“ぜひ預けてください”と言ってお子さんをお預かりしました。こどもを誰かに託すことを悪いことだと思わないで欲しい。人を頼って子育てをする雰囲気が、この地域の当たり前になったらいいですね」(石塚さん)

ファミリーサポート事業では、ヨガやビーズイヤリング作り、大人の絵本セラピーなど、お父さんお母さんのためのリフレッシュイベントも企画しています。また、送迎に関しては未就学児に限らず対応しているそうです。持病があって通学に大人のサポートが必要な高校生や、習い事に通う小学生を送迎することもあります。
一方、ホームスタート事業は、こどもが生まれる前から始まる子育て支援です。育休に入ったとたん社会から隔離されたように感じてしまうお母さんの産前産後の気持ちをサポートするなどしています。お母さんの悩みは一人ひとり違うもの。その悩みを丁寧にすくい上げ、小学校に上がるまでの数年間を切れ目のなく支援することを目指しています。
成長した「卒業生」が顔を出してくれることも
石塚さんや清水さんのもとには、「親子での初めてのお出かけがさくらんぼひろばで良かった」など、お母さんたちからのうれしい声が多く寄せられているそうです。
「多くのお母さんが、小さいこどもを連れて行けるところを切実に探していたり、そもそも赤ちゃんを連れ出していいのか悩んでしまったりしています。さくらんぼひろばは、そんな方たちのよりどころであり続けたいと思っています。思わず愚痴が出てしまっても、“うんうん”と聞いて寄り添うなど、とにかく全協力。元気なお母さんのこどもはすくすく育ちますからね」(石塚さん)
ときには、小学生になったこどもがランドセル姿を見せに来てくれたり、高校生が「僕のこと覚えてますか?」とひょっこり顔を出したりしてくれることもあるのだとか。そんな「卒業生」が顔を出してくれるたびに、「立派に育ってくれてうれしい。もっと頑張ろう」と思うと石塚さんは話してくれました。

これまで多くの親子の支えとなってきた本宮いどばた会の子育て支援。この先、どのように事業を続けていこうとしているのでしょうか。
「これまでの活動はほとんどが未就学児とそのお父さんお母さんを対象としていましたが、今後は小学生のお子さんをもつお父さんお母さんのお悩みを聞く機会も作ってみたいです。こどもが不登校になったりすると、親はどうしても自分を責めて、“私が悪かったんだ”と思ってしまうんですよね。私たちにできることは話を聞くことぐらいしかありませんが、気持ちを吐き出すだけでも楽になれるはずです」(石塚さん)
さくらんぼひろばという地域に開かれた子育て応援拠点を中心に、そうした場所へ足を運ぶことに不安があるならホームスタートを利用して徐々に雰囲気に慣れたり、こどもが少しずつ成長してきたらファミリーサポートを活用したり。本宮いどばた会の子育て支援は、複合的に活用できるのが大きな魅力です。どんな些細な悩みでもいつでも気軽に相談できる、お父さんお母さんのお守りのような存在として、地域の子育てに欠かせない役割を果たしています。
<動画>ショートムービーをご覧ください。
2026年3月3日公開
Photo by 佐久間正人
Movie by 杉山毅登
Text by 高橋晃浩
(マデニヤル<外部リンク>)
今回は取材エリアをこおりやま広域圏に拡大して、本宮市で活動する団体を紹介しています。





