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#2 体も心も元気になれる。地域の「いきいき百歳体操」がもたらすもの

ページID:0060911 更新日:2022年12月23日更新 印刷ページ表示

名倉いきいき体操 代表
郡山市社会福祉協議会 名倉支部 庶務
宮田輝雄さん

 

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「人生100年時代」といわれる今。年齢的な「長生き」だけではなく、ある程度自立した生活が送れる「健康寿命」を延ばすことで身体的にも経済的にも充実した人生を送れるという価値観が広まってきました。

 

その「健康寿命」を延ばすうえで効果を発揮しそうな体操「いきいき百歳体操」が今、全国で広まりを見せています。いきいき百歳体操とは、高齢者の介護予防を目的に高知市保健所が開発した筋力向上トレーニングです。郡山市では、DVDの貸与や保健師・運動指導士・リハビリ専門職の派遣などを通して普及を支援しており、現在は130超の地域団体・グループが市内の公民館や集会所などで自主的に活動しています。

 

その中の一つ、名倉地域公民館で活動している「名倉いきいき体操」をのぞいてみました。

 

ゆっくり重ねる「週1日、45分」が体力に

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毎週木曜日の午前10時。体操が始まる前から、公民館には楽しそうな声が響きます。和室では70~80代の参加者約20人が準備を終え、おしゃべりに花を咲かせていました。

 

「体操が始まる前の時間が一番にぎやか。その時間をストップさせるのが心苦しいと感じるぐらい、本当に楽しそうなんですよ。」

 

そんな皆さんを後方から見守るのは、名倉いきいき体操を主催する市社会福祉協議会名倉支部の宮田輝雄さん。体操がスタートした2019年からこの活動を支えています。宮田さんは時間になると参加者の前に出て、今日はなんの日か、最近あったことなどを笑いを誘いながら話し、会場を「体操モード」に切り替え。話を聞く参加者の皆さんの背筋はしゃんと伸びています。

 

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この日行われた体操は、通常版の30分よりも少し長い、45分の「スペシャルバージョン」。椅子に座ったまま、首回しや手や腕、脚を伸ばす運動、屈伸運動などを10~20回1セットで少しずつ体を動かしていくと、最後には全身のトレーニングになる。黙々と続ける皆さんのその表情は真剣そのものです。

 

「転びにくくなる」「立ち上がりしやすくなる」

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動きはあくまでゆっくりで、ご高齢の方でも実践できる手軽な体操。そのぶん気になるのは「効果」ですが、毎週の体操が始まった当初、特に高齢の方は、きつさを感じて諦めてしまう人が続出したとか。現在64歳の宮田さんも「少し息が切れる」と苦笑いします。

 

しかし、体操を続けていくうちに、参加者からこんな声が上がり始めました。

 

「1週間休んでしまうと、調子が悪い」

 

継続することで身体にプラスの影響を感じる人が確実に増え始めたのです。市内の他の地域では、最初は杖をついて来ていた方が3ヵ月体操を続けると自力で歩けるようになったり、和式トイレが使えるようになったりした例もあるといいます。

 

「筋肉を鍛える体操ですが、ムキムキになるようなことはありません。ただ、たくさん歩いても疲れることが少なくなったと感じますね。何もせずにいれば衰えていくだけの年齢ですが、毎週1回体操をすることで、そのスピードが緩んでいると感じるんです。やっぱり、続けることが健康維持には一番効果があるのかな。

 

腕や足の筋肉を使ってバランスを取るような運動もあるので、参加者の皆さんからは『転びにくくなる』とか『立ち上がりしやすくなる』という声もあります。そして、歩き姿に元気が出るんですよね。」

 

活動をつなげることで地域に恩返ししたい

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就職をきっかけに、30年以上名倉の実家を離れていた宮田さん。57歳で早期退職し帰郷しましたが、そのきっかけは父と叔父のダブル介護でした。その忙しい日々の中にありながらも、久しぶりに戻ってきた地元に「恩返しをしたい」という思いを抱いていたといいます。そんな時に受けた、地域福祉活動を推し進めるボランティア「福祉委員」の誘い。そこから、宮田さんの社会福祉協議会名倉支部での活動が始まりました。

 

名倉支部ではこれまで、高齢者が地域で仲間づくりをするための会食会「いきいきサロン」など、「通いの場」をつくってきました。特に一人世帯の高齢者は外出する機会が減って家に閉じこもりがちになり、運動機能や認知機能の低下リスクが高まります。定期的に足を運ぶ場所があると、こうしたことの予防にもつながるのです。

 

しかし、サロンの開催は年6回のみ。宮田さんや2021年に亡くなった当時の支部長には、「少人数でもっと気軽に、頻繁に集まれる場がほしい」という思いがあったといいます。「いきいき百歳体操」は、まさにその想いを満たすものでした。市の社会福祉協議会のスタッフの方などに会運営や運動のアドバイスを得ながら、会は定着していったそうです。

 

「自分の父や叔父が元気なうちにこうした(体操の)場があれば、もっと多くの方々が元気で過ごせるようなこともできたのかなとは思います。でも『間に合わなかった』ということではありません。将来につなげていければ地元への恩返しになりますよね。」

 

高齢者の元気が地域の元気に

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「コロナで自宅にいる時間が増えて足が悪くなってしまったの。整骨院のリハビリにも行ってるけど、こっちのほうが楽しい。通ってるから元気でいられるのよ。」

 

「体操そのものより、みんなの元気な姿を見ておしゃべりするのが楽しいんです。」

 

この日、体操に参加していた80代のお二人の言葉です。「新型コロナウイルスの感染拡大で楽しみにしていたカラオケなどの通いの場は失われたけれど、今はこの体操が楽しみで仕方がない」と話す方もいらっしゃいました。

 

「いきいき百歳体操」が地域の人々にとってかけがえのない存在となっている一方、会の運営には課題もあります。名倉地区で百歳体操の参加者は、そのほとんどが女性。男性の参加率が伸び悩むのは、高齢者向けの交流会全体でいえることだといいます。

 

「福祉委員として見守り活動を行い、高齢者世帯に声を掛けてはいますが、大切なのは福祉委員だけでなく地域全体が高齢者を支えていくことです。体操にこだわらずとも、男性も参加しやすい、外に出ていきやすい場をつくりながら、こうした会の運営も地域全体で協力して続けていきたいですね。」

 

郡山市全体に占める65歳以上の人口は、2021年時点で26.6%に上ります。4人に1人が高齢者の時代、その方々が元気でいることは地域全体の元気につながるはずです。少人数でも気軽に集まり体を動かせる「いきいき百歳体操」は、地域全体の元気を底上げする一つの鍵になるのかもしれません。

 


いきいき百歳体操~仲間と一緒に健康づくりはじめませんか~

ココカラこおりやま!健康メニュー「生きがいづくり(趣味・社会参加)


<動画>ショートムービーをご覧ください。


2022年12月23日公開

Photo by 佐久間正人(佐久間正人写真事務所<外部リンク>

Text by 五十嵐秋音(マデニヤル<外部リンク>

Movie by 杉山毅登(佐久間正人写真事務所<外部リンク>