ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > ココカラこおりやま! > 注目!コンテンツ > Health Wave KORIYAMA > #3 「旬の地場産はパワーが違う」楽しく野菜に向き合うススメ

本文

#3 「旬の地場産はパワーが違う」楽しく野菜に向き合うススメ

ページID:0065741 更新日:2023年2月15日更新 印刷ページ表示

ふじた農園 8代目
藤田 浩志(こうし)さん

 

Health Wave KORIYAMA

 

野菜の農業算出額が県内で最も多い(2020年時点)郡山市。一大産業を支える生産者の皆さんが、郡山の新たな名産品にしようと生産しているのが、「郡山ブランド野菜」です。「御前(ごぜん)人参」やキャベツの「冬甘菜(ふゆかんな)」、サツマイモの「めんげ芋」など、近頃はスーパーや直売所で日常的に目にする機会も増え、その名を冠し看板メニューとして提供する飲食店も出てきています。

 

降り積もった新雪がまぶしい12月の熱海町安子島(あこがしま)。郡山ブランド野菜の生産者で、野菜ソムリエの資格もお持ちの藤田浩志さんを訪ねました。健康な身体をつくるためには、新鮮で栄養価の高い野菜を食べることも欠かせません。藤田さんに、郡山産野菜の魅力や、野菜をおいしく食べるための考え方をお聞きしてきました。

 

郡山産野菜の魅力を伝える新名物

HealthWMAaveKORIYA3-2

 

郡山市には、ミネラルが豊富で保肥力の高い粘土質の土地や清らかな水、澄んだ空気など、農業に適した環境があります。郡山ブランド野菜は、こうした豊かな農業環境に合った本当においしい野菜を作り出し、郡山独自のブランドを育んでいきたいという思いから生まれた郡山の新しい名産品です。生産者でつくる「郡山ブランド野菜協議会」が、2003年から一つの品目につき200~300種類ある種の中から味わいと栄養価、そして郡山の土地に合った品種を吟味し、地域に根差した独自の名前を付け、ブランド化しています。

 

現在認定されている品種は、14種類。このうち藤田さんは、「御前人参」、キャベツの「冬甘菜」、サツマイモの「めんげ芋」の3種類を生産しています。

 

「想像していたより重いでしょう?」

 

と言って藤田さんが持ってきてくれたのは、11月~2月の冬季に収穫できる「冬甘菜」です。くっきりと浮き上がった葉脈に、みずみずしい黄緑色。ぎゅっと密度があり、受け取るとその重さに驚きました。

 

Health Wave KORIYAMA3-3

 

「半分に切ると、なんじゃこりゃっていうぐらい、葉が詰まっているんです。芯はべらぼうに甘く、ただのキャベツを食べるのとでは、幸せ度がまったく違うと思います。」

 

と藤田さんが言うとおり、一番の特徴はその名の通りの甘さです。最も旬の時期を迎えると、糖度はスイカに匹敵する11度にも達します。普通のキャベツとの違いが最もわかるのが千切り。その柔らかさからスープに入れればすぐに火が通り、キャベツのうまみが溶け出るため最小限の調味料だけでおいしく仕上がるのだとか。

 

Health Wave KORIYAMAグラフ1Health Wave KORIYAMAグラフ2

冬甘菜の特性(出典:郡山市ブランド野菜協議会<外部リンク>

 

「知り合いのシェフが東京で修行し、郡山でフレンチレストランを始めたのですが、野菜そのものの味がすごく濃くて、調味料の量がどんどん減っているそうです。」

 

ただおいしいだけでなく、減塩、減糖にもつながる。郡山ブランド野菜には、そんな効果や魅力もあるようです。

 

おいしいということは、栄養価が高いということ

Health Wave KORIYAMA3-4

 

そんな冬甘菜ですが、時期が違うと味がまったく異なるといいます。

 

「10月初旬にも収穫できるのですが、その時期ではちっとも美味しくありません。1回か2回、霜が降りてからのほうが圧倒的に甘みも増しますし、味わい深くなる。ですので、旬の11月以降に採れたものしか『冬甘菜』とは名乗れないんです。同じように御前人参も、採ろうと思えば夏にも採れますが、旬に収穫したものとは味が全然違います。

 

野菜を食べておけば栄養的に問題ない、と思う人も多いかもしれませんが、同じ種から生まれた野菜でも、採れた時期によって栄養価は変わります。流通や包装の技術が進歩したとしても、新鮮な旬の地場産野菜はパワーが違う。旬の新鮮な野菜はおいしい。そしておいしい野菜は栄養価が高い。いいこと尽くめです。」

 

秋冬野菜の生産には寒さが非常に重要。日中は暖かくても夜になるとしっかり気温が下がり、真冬でも露地栽培ができる適度な寒さと降雪量が必要だといいます。これ以上暖かくても味が乗り切らず、雪が多いと栽培そのものができなくなる。そうした理由から、藤田さんは「郡山は野菜の生産には最適の環境」と語ります。

 

「郡山は一つの品目だけではなく、地元で育った多くのお野菜を楽しめる恵まれた土地です。生産量が多く人口が少ないと農家は大都市圏で売るしかありませんが、地元に旺盛な消費があるからこそ、そうした新鮮なお野菜を地元向けにも安定して流通させることができる。この環境は、農家にとってもありがたいものですね。」

 

「なぜうまい」を伝えていくため野菜ソムリエの資格を取得

Health Wave KORIYAMA3-5

 

家族で代々農業を営む藤田さんですが、就農する以前のご実家は、米の専業農家でした。明治大学農学部卒業後、東京で会社勤めを1年経験し帰郷。郡山市内で大規模に稲作を手掛ける会社で米作りを学んだ後、結婚を機に実家で新規就農しました。実家では手掛けていなかった野菜作りに取り組み始めたきっかけこそ、ブランド野菜との出会いだったといいます。

 

「就農自体に抵抗があったわけではありませんが、親と同じことをやりたくないという、ちょっとした反抗心はありました。私が就農した当時は、郡山ブランド野菜の事業がスタートして間もなくのタイミング。ただ野菜を作って市場に出荷するのではなく、自分たちで種を選び、名前を考え、新しい名物を作り上げていくというスタイルに惹かれましたし、家業として自分の道を切り開くという意味でも魅力を感じたんです。」

 

冬甘菜の生産初年は害虫で2,000個が全滅するなど栽培は一筋縄ではいきませんでしたが、徐々に生産も落ち着き、ブランド野菜協議会のメンバーとして活動の立ち位置を探る中、「野菜ソムリエ」という資格の存在を知ります。

 

「よく農家の方が持つ『自分の作るものはうまいんだ』という自信。じゃあ『なんでうまいの?』と聞いても、なかなか言葉が出てこないことが多いんです。自信のある農産物のおいしさを伝えるには根拠が必要だと思っていて、その一つとして野菜ソムリエのような資格が有効だと思いました。」

 

2001年、藤田さんは野菜ソムリエの資格を取得。以後、生活者と生産者の架け橋となり、講演活動や直売会の企画・運営・販売などに携わっています。

 

楽しい食事は、健康につながる大切な要素

Health Wave KORIYAMA3-6

 

野菜ソムリエとして学校や幼稚園に足を運んで講演する際、親御さんからよく受けるのが「野菜の好き嫌いをなくすにはどうすればいいでしょうか?」という相談。「嫌いなものは無理に食べなくてもいい」というのが、それに対する藤田さんの持論です。理由は「食=楽しいものであるべき」という考えだから。

 

「食べることは人生の中でも大切な要素。苦手な食べ物を無理に食べるのは耐え難いことです。健康にはメンタルも大事ですから、精神的に良い状態で楽しく食事をすることが、健康な暮らしにつながると思っています。

 

ただし、ただ避けるだけではなく、苦手な理由を探してみましょう。それがわかれば、もしかしたら調理法を変えることで食べられるようになるかもしれない。例えばトマトが苦手なら、そう感じる理由を見つけてあげること。種の部分が苦手なのであれば、その部分を取り除けば食べられるようになるかもしれません。それでも食べられないのであれば、別の食材で似たような栄養を補えば良いのです。」

 

一日に必要な野菜の摂取量は「350g」といわれています。決して簡単な量ではありません。そこで、「楽しく食べる」ヒントをもう一つ教えていただきました。

 

「郡山ブランド野菜のような美味しいものが皆さんの手元に届くまでに、どれだけの人の努力や頑張り、支えがあるか。そうした背景を知れば、食べることはますます楽しく、面白く、愛おしいものになっていくのではないでしょうか。野菜ソムリエとして、そうした背景を多くの人に伝え続けていきたいです。」

 


生産者のストーリー「フロンティアファーマーズ」もご覧ください!

 開拓者精神が息づく郡山で農業の世界に生きる人々の姿をインタビュー記事と写真でお伝えしています。

生産者のストーリー「フロンティアファーマーズ」(郡山市ウェブサイト)

note(インタビュー記事)<外部リンク>

facebook<外部リンク>

Instagram<外部リンク>

 

藤田さんの記事はこちらから!
フロンティアファーマーズ#14 農家8代目、野菜ソムリエにして教育委員。地元野菜の伝道師が寒さを恵みに育てる「郡山ブランド野菜」<外部リンク>


<動画>ショートムービーをご覧ください。


2023年2月15日公開

Photo by 佐久間正人(佐久間正人写真事務所<外部リンク>

Text by 五十嵐秋音(マデニヤル<外部リンク>

Movie by 杉山毅登(佐久間正人写真事務所<外部リンク>