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【市制施行100周年記念特別版・郡山市いきいき100歳Vol.2】 「肝っ玉母ちゃん」ツヤヲさんの日課は、朝晩に歌う「会津磐梯山」とパタカラ体操
鈴木 ツヤヲさん
郡山市は2024年に市制施行100周年を迎えました。この「100」という数字に合わせ、Health Wave KORIYAMAでは、二人の100歳の方にお話を聞いてきました。お二人の生活からは、何歳になっても元気にいきいきと暮らし続けるヒントが見えてきます。今回は、郡山市中田町のご自宅で息子さんご夫婦と暮らす鈴木ツヤヲさんに会いに行ってきました。
面倒見の良い「肝っ玉母ちゃん」
ツヤヲさんは1924年2月6日生まれの100歳。生まれも育ちも中田町下枝地区です。暑さが厳しくなる夏はショートステイを利用していますが、普段はご自宅で長男の義男さん・美知子さん夫婦と過ごしています。
補聴器を使用しなくても会話ができ、めがねもかけたことがなく、薬もほとんど飲んだことがないというツヤヲさん。95歳の時に自宅のベッドから落ちて骨折しても、無事に回復したというほど強い身体が自慢の一つです。
10歳で尋常小学校を卒業してからは、葉タバコや養蚕、野菜作りなど家業の農業に携わってきました。「町のほうにはあまり出なかった」といい、実家の近所に嫁いでからも、野菜やお米、お味噌などを作ってきました。
「家でじっとしているよりも、外でいろんなことをしていたほうが好き」と話すツヤヲさん。息子さん夫婦は「とにかく一生懸命に働く人」と声を揃えます。1995年に亡くなったご主人は体が強くなく、そのぶんツヤヲさんが力仕事でもなんでもこなしていたそうです。90歳ごろに畑を美知子さんに引き継ぐまでは、朝早くから夜遅くまで一日じゅう畑仕事をしたり、近所にお茶飲みに行ったりと活動的だったとのこと。義男さんは若かりし頃のツヤヲさんを、「絵にかいたような肝っ玉母ちゃんでした」と振り返ります。
左が60歳ごろのツヤヲさん。農作業の合間に自宅前でお孫さんと撮った一枚(鈴木さん提供)
農作業に人手が必要な時はご近所に手伝ってもらい、朝早くからみんなで農作業をして、お礼に朝ごはんをごちそうする。逆に人手を必要としている人がいれば、誰かを連れて手伝いに行く。人に助けられたらそのぶんお返しする。そんなふうに、身近な人を頼り、頼られ生きてきたツヤヲさん。中田地区はかつて商店が少なく、行商に頼ることも多かったといいます。以前より付き合いのあった行商さんが、鈴木家の近くに店舗を構えた時に、急遽泊まることになった両親が寝る布団がないと相談に来たことがありました。それを聞いて、ツヤヲさんは快く客用の布団を貸してあげたのだそう。
「その気持ちがうれしかったのでしょうね。行商さんはそれから長いこと経ち、ばあちゃんが年を取ってから、『いい布団で寝てくれ』と言って、恩返しとして新品の布団をくださったんです。私も小さい頃から、『人の面倒を見ていると、必ずどこかで返ってくる』とよく言い聞かされていました。ばあちゃんにとってはそれが生きがいなんでしょうね。慕ってついてきてくれる人は今でもたくさんいるんですよ」(義男さん)
ツヤヲさんの作った野菜は近所でも評判で、ご自分で栽培した小麦でうどんを打つのも得意だったのだとか。料理と畑は美知子さん、うどん打ちは義男さんが引き継いでおり、いずれもツヤヲさんのお墨付きです。
息子と一緒に歌って体操。にぎやかな鈴木家の日常
そんなツヤヲさんの日課は、歌をうたうこと。
ご自宅では、美知子さんが朝晩の食事の支度をしている間、ツヤヲさんと義男さんはお互いの歌を手拍子しながら聴き合います。ツヤヲさんの十八番は、千昌夫の『北国の春』。取材の日は、こちらもお気に入りで毎日うたっているという『会津磐梯山』の伸びやかな歌声を聞かせてくれました。
歌い終わると義男さんから「ツヤヲ、うまいぞっ!」と声が飛びます。
義男さんが歌い終わると、ツヤヲさんは「お父さん、うまいぞっ!」
これが、鈴木家の日常。
義男さんとの「※パタカラ体操(口から食べて飲み込む力が鍛えられる体操)」も日課で、はきはきとした謡いぶりの秘密が、こうした日々の積み重ねにあることがうかがえます。
美知子さんが以前よさこいをしていた時に使っていた鳴子もお気に入り
※詳しくは日本歯科医師会<外部リンク>ホームページ(オーラルフレイル対策のための口腔体操)をご覧ください
取材にうかがったのは、ご自宅に戻る2日前。まもなく息子さん夫婦との日々が戻ってきます。取材に少し緊張気味だったツヤヲさんでしたが、「ご自宅に戻るのは楽しみですか」とうかがうと、「んだない」と、はにかみ笑いで答えてくれました。
<動画>ショートムービーをご覧ください。
2024年8月28日取材
Photo by 佐久間正人(佐久間正人写真事務所<外部リンク>)
Movie by 杉山毅登(佐久間正人写真事務所<外部リンク>)
Text by 五十嵐秋音(マデニヤル<外部リンク>)