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#15 技術を磨けば、スポーツはもっと楽しくなる。デンソーエアリービーズが郡山で子どもたちにつなげたいこと
株式会社デンソー
デンソーエアリービーズ部長
杉岡 憲さん
バレーボールSV.LEAGUEのデンソーエアリービーズ(以下、エアリービーズ)は、郡山市を拠点に「エアリービーズバレーボール教室」を開いています。「バレーボールを全国に広める」というミッションのもと、子どもたちが部活動以外の場所で“うまくなれる喜び”を感じられる場所になっています。
ミッションは全国にバレーを広めること
エアリービーズは、これまで何人もの日本代表選手を輩出してきたバレーボールのトップリーグチームです。2017年に郡山市を「ホームパートナー」に制定し、毎年ホームゲームを開催してきました。徐々にチームが浸透してきた2024年、愛知県西尾市にあった活動拠点「ホームタウン」を郡山市へ移すことを決断。現在も練習拠点は西尾市ですが、2027年をめどに郡山市に練習用の体育館を整備し、選手やチームスタッフも郡山での暮らしをスタートさせます。
「チームが目指す目標の一つは、全国にバレーボールを広めていくこと」
部長の杉岡憲さんは、ホームタウン移設の経緯をこのように語ります。
「バレーボールのトップリーグチームは大都市圏に集中しています。愛知県内に拠点を置くSV.LEAGUEのチームは、エアリービーズを入れて男女計4つありました。リーグで東北をホームタウンにしているのは山形県の1チームのみです。郡山市は、ホームパートナーになる時に掲げた震災復興と、競技拡大の2つの目標をかなえられる絶好の場所でした」
試合会場では、選手の強烈なスパイクや身のこなしにジャージ姿の子どもたちが目を丸くして見入る姿がよく見られます。スポーツ少年団や部活動で今まさにバレーボールに夢中になっている子どもたちにとって、日本を代表する選手のプレーを間近で観られることは大きな刺激になるでしょう。
そんな子どもたちがバレーボールの技術をより磨ける場所が、2018年に開講したバレーボールスクールです。地域のバレーボール連盟から推薦された中学生が参加できるこのスクールのメニューは、一定の技術のある選手がさらに高みを目指すことを目的とした発展的な内容。2024年で7年を重ね、昨年度の郡山・県南エリアの高校選抜チームは、顔ぶれの多くがスクールの卒業生だったといいます。
2024年にはバレーを始めたばかりの中学生も参加できる「ベーシックコース」を用意し、より幅広いステージの子どもたちが切磋琢磨する場になりました。司令塔であるセッターだけを集めたコースは、経験を問わず指導者も参加が可能。技術はもちろん、コミュニケーションなどのセッターが期待される役割を学べる場になっています。
「スポーツは技術を高めることによって、より競技に没頭できるようになるはず。バレーボールスクールでは、さまざまなクラスを設けることで、地域全体のボトムアップにつなげたいと考えています」
スクールは「引き出しを増やす場所」
ベーシックコースが行われている郡山市東部体育館にお邪魔すると、学校も学年もばらばらの中学生が20人ほどコートに集まっていました。コーチを務めるのは、U21女子バレーボール日本代表監督の山口祐之さんと、エアリービーズアカデミーコーチの森谷史佳さんです。森谷さんは選手としてエアリービーズなど3チームを経験し、世界大会で銅メダルを獲得した実績があります。
この日のメニューはパスをする時の距離の取り方や、トスやアンダーの上げ方といった基礎的な内容。最後は参加者がコーチの二人が放つ強烈なスパイクに立ち向かうシーンもありました。
大槻中学校1年の村山麻衣さんは小学2年の時に競技を始めましたが、中学校入学から上達している実感が持てず、もやもやを振り切りたくて参加したといいます。「オーバーハンドパスが苦手でしたが、指先で弾くことや相手の真ん中に狙って返す、基礎の部分を見直せてよかった」と充実した表情。
2年生までスクールに参加していた郡山第一中学校3年の根本愛梨さんは、高校入学までの間に基礎をおさらいしたいと、ベーシックコースに足を運んでいます。コーチ二人のスパイクに、しっかり腰を落として立ち向かう姿は真剣そのもの。「パワーというか、ボールの重みがすごかったです。でも、基礎がちゃんとしていればボールを受けられるはず。基本を見直すきっかけになりました」と話します。
コーチの山口さんはこのスクールを、引き出しを増やす場所にしたいといいます。
「教えすぎないことを意識しています。壁にぶつかった時の対応策は、自分で考え、答えを見つけることで自分のものにできる。いろんな選択肢を持っておけると楽ですが、自分だけで用意するのはなかなか難しい。僕たちはそうした引き出しを作るサポートをしています。何かに直面した時に、逃げるのではなく頭を柔らかくしていろんな選択肢を考えるという意識は、コート外の生活でも役に立つはずです」
年齢関係なくボールに触れる場をつくりたい
拠点が本格的に郡山市に移る2027年以降は、試合前に選手がバレーボール教室をしたり、小中学生向けの大会を開催したりと、西尾市で続けてきたイベントを郡山でもスタートさせるといいます。年齢関係なく子どもたちがボールに触れられる場もつくりたいと、杉岡部長は構想を語ります。
「もちろん試合を見に来ていただくことでも、元気や活力を届けられると思っています。ぜひ会場へ、強烈なスパイクを見に来てください。繋ぎづらいボールをフェンスぎりぎりまで取りに行って、しっかり3回で返す。そんな選手の熱気や気迫をぜひ見ていただきたいです」
2024-25シーズンの目標は、ずばり優勝。試合は日本一を決めるチャンピオンシップを含め、2025年5月まで続きます。この地で高みを目指す姿そのものが、子どもたちの憧れにつながっていくことでしょう。技術を高める意欲を育て、スポーツを楽しめる可能性を切り開くエアリービーズの活動はまだ始まったばかりです。
■デンソーエアリービーズ<外部リンク>
<動画>ショートムービーをご覧ください。
2025年2月5日公開
Photo,Movie by 杉山毅登(佐久間正人写真事務所<外部リンク>)
Text by 五十嵐秋音(マデニヤル<外部リンク>)
Interview by 片倉菜々(マデニヤル<外部リンク>)