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#13 オレンジカフェは認知症と向き合えるようになれる場所

3 すべての人に健康と福祉を17 パートナーシップで目標を達成しよう
ページID:0108052 更新日:2024年4月5日更新 印刷ページ表示

こおりやまオレンジカフェ ビッグハート

 

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年齢を重ねるごとに発症しやすくなる認知症。もっとも身近な病気の一つです。内閣府の調査によると、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると見込まれています。しかし、認知症という病気に向き合うことは、気力も体力もいることです。

 

認知症の家族がいる人などが集まって悩みを共有できる場所がオレンジカフェです。郡山市で委託しているカフェは6ヵ所(2024年3月時点)あり、認知症に関わる人だけではない地域の憩いの場としても親しまれています。今回は、郡山市上亀田の郡山ビッグハートで開かれている「こおりやまオレンジカフェ ビッグハート」にお邪魔してきました。

 

毎月1回、認知症への理解を深める場
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郡山ビッグハートのオレンジカフェは、郡山市医療介護病院が2016年から運営し、認知症の人やその家族、地域の方々が認知症への理解を深める目的で毎月1回開かれています。会場は入口をくぐってすぐの、日の光がよく入る玄関ホール。この日の参加者は、近くに住むご夫婦や病院内のデイサービス帰りの方、ご家族に送ってもらって来た方など4人です。

 

午後2時30分になると、まずは「いきいき100歳体操」で身体を温めます。その後、スタッフによるミニ講座がスタート。この日は、看護部長の宗形初枝さんが、認知症を引き起こすメカニズムについて解説しました。

 

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認知症って、脳みそにシミができるっていわれているんです。シミができる部分によって、いろんな症状を引き起こすといわれています。私もね、すぐ人の名前とか忘れちゃう。そうした症状が進行していくと、ごはんを食べたことや、ガスを消すことなど、忘れちゃいけないことも忘れてしまう。それが認知症なのです。

 

シミがつかない脳みその部分が”偏桃体”というところ。これは道で車が来たら避けるといった、本能的なセンサーのようなもので、認知症の進行を抑えるためにはこの偏桃体をうれしくしてやることが大事。お茶飲んで最近良かったことを話したり、笑ったり。そうしていると、認知症なんて怖くなくなります。今日は、その練習をしましょう!

 

参加者は、ご夫婦やスタッフなど隣にいる人同士で目を見つめ合って、手をつなぎ合って、微笑みかける。夫婦なら「愛してるよ」と言い合う。宗形さんに促されつつ、ちょっと照れながらも和やかな時間が流れます。

 

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その後は、スタッフも混ざってお話する時間。子どもの頃の話や家族の話をしたり、ペットの写真を見せ合ったり。宗形さんのハンドマッサージも始まりました。

 

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郡山ビックハートのオレンジカフェは、新型コロナウイルスの影響で一時休止する前は50人近く集まっていた時期もあったとか。毎月デイサービスの後に来ているという90代の女性は、ここでオレンジカフェが始まった当初から通っているのだそう。「コロナで休止になる前は、にぎやかだったんですよ。音楽の演奏や歌もあって、楽しかった。ここに来て、顔見知りの人と話すのはボケ防止になって良いですよ」

 

認知症に向き合うのは時間がかかること

 

コロナ前に比べれば参加者の数は減りましたが、現在も、認知症の家族について相談しにくる介護者はもちろん、認知症の当事者や、楽しくおしゃべりをしにくる人も多くいるのだそう。

 

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あそこに行けば認知症の相談に乗ってもらえる、という雰囲気を地域でつくっていくことが大事だと思っています。自分や家族が認知症であることを隠すことなく、『困ってることを言っていいんだよ』と発信して、話を聞く受け皿になりたい。少しでも楽しみながら、認知症と向き合える場にしたいですね」と宗形さん。

 

相談をしにきた人からは「話を聞いてもらうことで気持ちが楽になった」という声が多く上がっているのだそう。

 

ご家族が認知症を受け入れて、行動を変えるまでには時間かかります。『認知症の家族に同じ事ばかり聞かれて怒ってしまう』という人に対しては、理屈で説明しても仕方ない。まずは話を聞いて、みんな同じ悩みを持っているとわかってもらうこと、そして落ち着いてきたら、どうしてそういう状態になっているのか理解してもらうこと。そして次のステップが、どう対処すればいいのかを知ってもらうことだと考えています。

 

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宗形さんは、認知症の奥さんの介護で悩んでいたある男性の話をしてくれました。男性は若い頃から夫婦関係が芳しくなかったといい、愚痴をこぼすばかり。認知症になった奥さんは何かあると家を出て行ってしまい、探し回ることも多かったのだそう。「危ないことをしたから怒ったのに」と話す男性に、宗形さんは「認知症の人は怒った理由や投げかけた言葉じゃなくて、表情にしか反応できない」という話をしました。

 

そしたら彼は、奥さんが出て行くのは自分が怒った時だと気づいたみたいで。それから何度も話を聞いたし、ほかの参加者にそのことを話してもいたのですが、それでも怒らなければ気が済まないと言うんです。その後コロナで2年オレンジカフェが休止し、再開後に話を聞いてみると、『奥さんがズボンを履こうとしている姿を見ていたら、片方だけ上げられなくて、かわいそうで涙が出てきた』と話してくれて。あんなに怒ってばかりいたのに、ゆっくり、だんだんと、奥さんへの愛情が生まれてきたんでしょうね。

 

認知症に向き合うには時間がかかる。だからこそ、ここには何度も足を運んで話を聞かせてほしい。そのためにも、ここをもう一度来たいと思ってもらえるような場所にしなければ意味がないと思うんです。

 

優しく接する大切さは自然に伝えていきたい

 

オレンジカフェの役割は、もう一つ。医療や介護の知識を地域に発信していくことです。毎回のミニ講座では、介護福祉士や保健師、理学療法士や栄養士、医師などが、日常生活で病気やけがを防ぐような内容を伝えます。

 

その中の一つが、「人間らしさ」「その人らしさ」を大切にする「ユマニチュードケア」の考え方。認知症のメカニズムは研究が進んでいますが、患者への関わり方についてはまだ確立されていません。ユマニチュードケアは、特に認知症高齢者への関わり方で有効とされているケアの方法。ケアする人とケアを受ける人がお互いに尊重し、生きがい・やりがいを感じられる関わり方ができるようになることを目指しています。これは、郡山医療介護病院全体が基本に置いているものでもあります。

 

必要なケアをただするのではなく、しっかり視線を合わせて合意を得てから次の行動を起こす。つまり、ちゃんとノックをして入ることが大事なんです。そして、その時にはポジティブな言葉を使うことが大切です。要は、優しさを持って接することがユマニチュードケアの基本です。

 

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冒頭で宗形さんが促したオレンジカフェでの触れ合いも、このユマニチュードケアの考え方に即したもの。オレンジカフェに参加しているスタッフも、全員がユマニチュードケアを学んでいます。

 

ケアの考え方は大事ですが、押し付けてはだめだし、前に立って指導することではない。そばにいて一緒に行動していくことで、自然と伝えられるものなのかなと思います。

 

 

当事者が語る場は何かの気づきになるはず

 

参加者に何度も足を運んでもらうことで、継続的なサポートにつなげたいと繰り返す宗形さん。一方で、新型コロナウイルスの影響による休止から参加者の数は伸び悩んでいて、オレンジカフェの認知を広げるという意味では、開設当初に戻った感覚だといいます。

 

当然、コロナ前よりも高齢者は増えていて、認知症のことで悩んでいる人も増えているはず。本当に悩んでいる人に情報が届いていないのかもしれません。この前は、県外から郡山市の家族のもとに介護に通っているという女性から電話がきて、話を聞きました。相談先が見つからなかったのか、はじめは社会福祉協議会に連絡をくれたんです。相談できる場はやっぱり求められていて、その環境はもっとつくっていかなきゃいけないと感じています。

 

今後は、認知症当事者の方が語れる場をつくってみたい。それが、認知症の家族がいる人の何か気づきになるとも思うんです。本当に必要な人に、何度でも来てもらうこと。それが今の一番の課題です。

 

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オレンジカフェは気軽に参加できる、どんな人でも受け入れてもらえる場所です。認知症の家族との接し方に悩んでいるという人は、周りの人を連れて、お茶を飲みに行く感覚でぜひ足を運んでみてください。

 


こおりやまオレンジカフェ ビッグハート
会場:郡山市字上亀田1番地の1 郡山市医療介護病院1階玄関ホール
日時:毎月第4水曜日、14時30分~15時30分 ※要予約
Tel:024-935-0527(地域連携室)
参加費:200円(おみやげつき)
http://bigheart-hp.net/<外部リンク>

 

郡山市内で開かれているオレンジカフェの情報はこちらをご覧ください。
https://www.city.koriyama.lg.jp/soshiki/67/6289.html


<動画>ショートムービーをご覧ください。

2024年4月5日公開

Photo by 佐久間正人(佐久間正人写真事務所<外部リンク>
Text by 五十嵐秋音(マデニヤル<外部リンク>
Interview by 片倉菜々(マデニヤル<外部リンク>
Movie by 杉山毅登(佐久間正人写真事務所<外部リンク>