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#16 地域医療を支える郡山医師会が広めたい、健康でいるための行動変容

3 すべての人に健康と福祉を17 パートナーシップで目標を達成しよう
ページID:0134126 更新日:2025年2月7日更新 印刷ページ表示

郡山医師会
坪井 永保 会長

 

郡山医師会坪井会長

 

「医師会」と聞くと、どんなことをしているのかピンとこないという人もいるかもしれません。郡山医師会は自治体と連携して医療体制の土台をつくっている組織で、私たちも知らず知らずのうちにお世話になっています。今回は郡山医師会の坪井永保会長に、地域医療と市民の健康を守る思いについてお聞きしました。

 

 

郡山市の医療を支える大黒柱

 

私たちが日ごろ利用している医療サービスは、郡山医師会に支えられているものが多くあります。例えば日曜日に具合が悪くなった時、小児科や内科で診察を受けられるのは郡山医師会の会員医療機関が当番制で開院しているから。子どものワクチン接種や無料のがん検診も、郡山市の委託を受けて会員医療機関が行っています。

 

坪井会長は、郡山医師会の役割を「国や県から指示された医療施策を、医療現場でどう進めていくか郡山市と話し合い、実行していくこと」と話します。近年では、急速に拡大した新型コロナウイルス感染症に対応するために、郡山市保健所と連携しながら患者の診療やワクチン接種などの対応を進めました。

 

インタビューに答える坪井会長

 

普段から患者と接し、健康状態をみている医師のみなさんは、郡山市民の健康状態をどのように見ているのでしょうか。

坪井会長は「なんとかしなくちゃいけませんね」と厳しい表情を浮かべます。

郡山市に限った話ではありませんが、福島県は喫煙率が全国最悪の数字です。東日本大震災後にはじめてワースト1位になり、一度下がりましたが2022年にふたたび1位になりました。喫煙率が全国的に下がり続けている中で、この状況。若い方が吸い始める数は少なくなってきていますが、40~50代でたばこをやめられる人が少ないんです。

メタボリックシンドロームの割合も、全国ワースト4位。肥満の人が多いということは、高血圧や糖尿病の人が多いということです。それにより、糖尿病や脳梗塞・脳出血といった血管の病気も多く、これによる死亡率も全国トップクラスです

 

さらに、がん検診の受診率は福島県民全体で全国平均の40%を大きく下回る30%程度。がんは早期に見つけられれば決して怖い病気ではなく、死亡率も大きく下がります。福島県民は健康状態も芳しくなく、がんを早期に見つけるための行動も鈍い。耳の痛い話です。

 

子どもから広げる健康への意識

 

この状況を改善するには、一人ひとりの行動変容が必要だと坪井会長は語ります。

診察室でこうしなさいと言われると、聞きたくないと感じる方もいるかもしれません。塩分過多も、たばこも、運動も、検診を定期的に受けることも、意識改革の先にある行動変容につながらなければ、改善されないんですよ

 

郡山医師会では、健康や医療に関する情報を伝える講座を定期的に開いています。ただ、参加するのは普段から健康への意識が高い人たちが多くを占めます。そこで、特に力を入れているのが、学校への出前授業。子どもの頃からたばこの危険性や塩分の多い食生活への注意を促し、生活習慣病の予防につなげています。

 

坪井会長は呼吸器内科の専門医。禁煙外来で多くの患者と関わってきた経験から、このように話します。

私が理事長を務める坪井病院の禁煙外来には840人ほどの卒業生がいますが、孫や子どもに言われて禁煙を決めたという人がかなりいます。そういう人は、12週間の保険適用期間よりずっと早く卒業できるんですよ。子どもから大人に諭すという道筋は、とても効果があるんです

 

行動変容には子どもの意見が重要とのこと

 

子どもが学校で聞いてきたことを家で話すことが、家族の行動変容につながる。一人の行動変容はそのまた身近な人の行動変容につながり、連鎖的に広がっていくのです。

 

 

小さな一歩が未来の地域医療につながる

 

地域医療を提供し続けるために、医療機関を守ることも郡山医師会の大事な役割です。「医療機関の経営状況は非常にひっ迫しています。経営が順調なところは、ほぼないといっていいと思います」と坪井会長は語ります。きっかけは新型コロナウイルス感染症の拡大による人材不足や、感染対策にかかるコストの増大。そこに、高齢化などによる救急搬送件数の増大が追い打ちをかけているのだそう。

 

こうした状況を広く伝えるために、2024年10月には郡山市などと組織する「郡山市の救急医療体制の将来を考える会」として、郡山市の救急医療体制の将来を考えるシンポジウムを開催しました。会場には医療系の専門学校の学生や、高校生の姿も。消防や医療現場などの視点から救急医療の現状や救急時の参考となる事例について紹介し、救急医療のいまを考える機会にしました。

令和6年度 シンポジウム「郡山市の救急医療体制の将来を考える」

 

シンポジウム風景

 

福島県が2024(令和6)年に策定した「第8次福島県医療計画」で、郡山市は「県中医療圏」に属します。救急医療を受け入れている病院が集中しているため、田村地域や白河地域を含む近隣市町村からも多くの救急患者が運ばれてきます。郡山市の医療体制を守ることは、郡山市以外の広い地域の命を救うことにも直結するのです。

 

しかし、救急医療の現場は予断を許さない状況が続いており、坪井会長は危機感をにじませます。

「救急現場のひっ迫を是正する方策として、本来救急車を使うほどでない患者さんが救急車を呼んだときに患者さんに費用を請求する『選定医療費』を三重県松阪市や茨城県が導入しています。これは行政や救急の現場からいろいろな意見が出ており、その効果がどの程度出るかなどを注視しながら、医師会としては意見を述べたいと思っています。」

 

寺西副会長と
​シンポジウムで基調講演をした郡山医師会寺西寧副会長(総合南東北病院名誉院長)と

 

本当に必要な人のところだけに救急医療が届くようになれば、救急車の出動件数はおのずと減ってくるでしょう。看護師等の専門家が24時間相談を受け付け、119番すべきかどうか助言をもらえる福島県救急電話相談ダイヤル「#7119」の認知と利用の拡大は、今のところの近道といえそうです。

 

組織として地域医療を支えるのが、郡山医師会の役割です。しかし、自分の健康を守る行動変容は自分にしかできません。小さな一歩は「自分のため」を飛び越えて、ゆくゆくは地域医療の未来につながっていくでしょう。

 

119番を押すべきか悩む、その時に備えて電話相談ダイヤルの番号を覚えておくことも立派な行動変容。まずは、スマートフォンの連絡先に「#7119」を登録するところからはじめてみませんか。

 

 

*坪井会長が健康のために意識していることは?

 

土曜日の訪問診療後に取材に応じてくれた坪井会長。とても忙しい日々を過ごしているようですが、ご自身の健康はどんな意識で管理しているのでしょうか?

 

睡眠をよくとることですかね。だいたいいつも3~4時間…なので足りていませんが、意識はしています。それと、仕事とプライベートのオン・オフをしっかりつけること。常に張りつめていたら気力も体力も持ちませんよ

 

健康で意識することは睡眠

 


郡山医師会<外部リンク>

所在地:郡山市朝日2-15-1
TEL:024-922-8087
FAX:024-933-3822


<動画>ショートムービーをご覧ください。

2025年2月7日公開

Photo by 佐久間正人(佐久間正人写真事務所<外部リンク>
​Movie by 杉山毅登(佐久間正人写真事務所<外部リンク>
Text by 五十嵐秋音(マデニヤル<外部リンク>