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【博物館準備室コラムVol.5】~ロゴマークが示す「私たちの博物館」~
郡山市歴史情報博物館のロゴマーク制作を担当しました準備室の栗城です。
ロゴマーク制作に携わった経験は、私にとって大きな挑戦であり貴重な学びの機会でした。
まず、ロゴマークの制作にあたり、はじめに行ったのは、プロポーザル方式での事業者選定でした。これは、デザイン事業者の多様な提案を受け、最も適したデザインを採用するための手法です。4者から提出された提案は、博物館のテーマである「郡山市の歴史と文化」をいかに表現するか、という観点で精査されました。特に重要視したのは、市民に親しみを持たれ、長く愛されるデザインであることです。提案されたデザインはどれも、郡山市の歴史的特徴や、博物館設置の目的、未来へと繋がるイメージを上手く図案化していて、個人的には甲乙つけがたい素晴らしいものでした。
提案されたデザイン案は、市民投票にかけられました。これは、ロゴマークが市民のためのものである以上、その選定プロセスにも市民の声を反映させたいという思いからです。郡山市に関心を持つ多くの方が参加しやすい仕組みを考え、オンライン投票とし、結果として、市内外330人から投票をいただきました。このプロセスを通じて、ロゴマークが市民に「自分たちの博物館の象徴」として受け入れられる下地が築けたと感じています。獲得票数の順で点数を割り振り、選定委員会の審査に加算しました。
<決定したロゴマーク>
ロゴマーク制作においては、いくつかの課題にも直面しました。その一つが「デザインの普遍性と独自性の両立」です。郡山市の歴史や文化を象徴しつつ、時代を超えて使用できる普遍的なデザインを目指しましたが、そのバランスは非常に難しいものです。選ばれたデザインは、この課題に対し、郡山市のアイデンティティを明確化することで解決してくれました。具体的には、明治15年に開成社等の有志が安積疏水の通水を記念して最終地点である麓山公園に築いた「麓山の飛瀑」をモチーフにシンプルで親しみやすい形状となっています。
こうしたプロセスを経て完成したロゴマークは、「郡山市の歴史と未来を結ぶ架け橋」としての役割を担っています。滝の流れは時代と歴史を、広がる水の流れは未来へのつながりと交流の広がりを表しており、親しみやすさを表現し、地元の象徴的な要素が組み込まれたロゴは、見る人に郡山市の文化や魅力を伝えるものとなっています。
ロゴマーク制作は、一つのデザインが持つ影響力を実感する機会でした。それは単なる図案ではなく、市民の想いと郡山市の未来をつなぐ象徴です。この経験を通じて、市民とともに歴史情報博物館を作り上げるプロセスに関われたことを、心から誇りに思います。