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【博物館準備室コラムVol.6】歴史資料移動の舞台裏~廃校から博物館へ~

ページID:0129258 更新日:2024年12月15日更新 印刷ページ表示

 準備室の佐藤泰之です。

郡山市歴史情報博物館の整備において、私は廃校に保管されていた膨大な歴史資料の移動と保全を担当する立場でプロジェクトに携わっています。この仕事は、単なる物品の運搬作業だけでなく、貴重な文化財を守り次世代に引き継ぐという責任の重いものです。移動の過程では、多くの課題があり、関係者と何度も協議を重ねながら一つ一つ解決していく必要があります。

 郡山市には長年にわたり収集されてきた膨大な歴史資料が存在します。その一部は、かつて廃校となった学校の教室や体育館に保管されています。しかし、これらの場所は十分な保存環境が整っておらず、湿度や温度の変化、虫害などによる劣化が懸念されていました。博物館整備に伴い、これらの資料を新しい施設に移動し、適切に保存・展示することが急務となりました。

考古資料の収蔵状況

<廃校での考古資料収蔵状況>

歴史資料の収蔵状況

<廃校での歴史資料収蔵状況>

 移動を始める前に、最も重要なのは資料の状態確認と燻蒸作業です。廃校という環境では、資料にカビや虫が付着している可能性が高く、そのまま移動すれば新しい博物館の収蔵環境に悪影響を及ぼします。そのため、移動前にすべての資料を細かくチェックし、必要に応じて燻蒸処理を行うことが必須です。

 燻蒸処理では、資料を密閉し専用の機材と薬剤を用いてカビや虫を完全に駆除します。しかし、この作業には多くの時間と労力がかかります。また、過剰な薬剤使用は逆に資料を損傷する可能性があることから適切な薬剤の選定も重要となります。これらの点を担当学芸員と慎重に調整し、優先順位をつけながら進めていくこととしました。

 学芸員との協力は、このプロジェクトの成功に欠かせないものです。一方で、学芸員それぞれの専門分野や意見が異なるため、調整には多くの時間を要します。ある学芸員は、資料の安全性を最優先し、移動そのものを慎重に進めるべきだと主張する一方で、別の学芸員は、早期に移動を終えて収蔵環境を改善すべきだと提案しました。私は、双方の意見を尊重しながら、中立の立場でスケジュールや手順を調整しました。

 具体的には、資料の重要度や状態に応じて移動計画を段階的に策定し、優先度の高い資料から処理・移動を開始します。また、学芸員だけでなく、外部の専門家や作業員とも連携し、円滑な作業が進むような調整に努めました。

 実際の移動作業はこれからになりますが、資料が収納されていた箱の劣化や、搬出経路の確保、移動先の保存・展示環境の準備等いくつもの問題が想定され、これらの問題に対しては、その場で柔軟に対応することが求められます。

 こうした努力を経て、無事にすべての資料を新しい博物館に移動することができれば、資料が適切に保存されるだけでなく、多くの人に公開され、郡山市の歴史を伝える役割を果たすことになります。

 私は、このプロジェクトを通じて、歴史資料の価値を守ることの重要性を改めて実感しました。また、協力して課題を解決するプロセスの中で、多くの学びとやりがいを得ることができました。

 これからも郡山市の歴史を未来に伝えるために、自分が果たせる役割を全うしていきたいと思います。そして、今回の経験を糧に、新たな挑戦にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。