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【博物館準備室コラムVol.9】歴史情報博物館の民俗展示
初めまして、歴史情報博物館準備室の豊田と言います。私は民俗資料の担当をしています。
さて、民俗と聞いて、皆さんはどんなことを思い浮かべるでしょうか。なんだかよく分からないといった方もいるかもしれません。
民俗学は、書いてある文字を研究対象にする文献史学や、地中に埋まっている資料を対象に研究する考古学とは異なり、地域に伝承されている生活文化や習慣を資料として、日本人の生活の変遷を明らかにしようとする学問です。主に口で伝えられてきた伝承を聞取りという手法で調査を行います。
ちなみに、同じ発音をする言葉に「民族学」がありますが、この二つは同じ発音でも意味は大きく異なります。英語で書くと民俗学は“folklore”、民族学は“ethnology”となり、歴史情報博物館で取り扱うのは「民俗」の方になります。
口で伝わってきた歴史を対象にする民俗学では、資料として取り上げるものに文献史学や考古学とは違い、実物がないものがあります。そんな中で民俗分野の展示をどうやってするのか。それは、「民具」と呼ばれる生活の中で使われてきた道具たちと、その道具を使用していた人たちのエピソードをもとに人々の生活の様子を取り上げます。
この「民具」という言葉は渋沢敬三という民俗学者が作りました。(この人は新一万円札になった渋沢栄一の孫にあたる人です。)
今まで郡山市麓山にあった郡山市歴史資料館では、民俗資料を3階で展示していました。「なつかしい生活用具展」と題して、生活の中で使われていた道具や遊び道具などを展示していました。こういった資料を並べて解説する展示も、歴史情報博物館で続けていきたいと考えていますが、それだけではなく、民俗の展示ではほかの分野の展示とは少し変わった形で展示をしていきたいと思っています。

図1〈歴史資料館の民俗展示〉
歴史情報博物館の中で主として民俗の展示をする場所は、「地域ギャラリー」と名付けられている場所です。大きく見えるのは郡山市全域の地図になります。この地図は木のブロックで作られており、木の色合いで市内の地域を区別して表しています。また、木のブロックで作られているため、地図の形を変えることもできます。この地図を使いながら、郡山市各地域の民俗について取り上げていければと考えています。
また、別の壁面には資料を展示できる棚が備え付けられており、映像や写真だけではなく、実物の民具を展示して、実物の資料を皆さんに見ていただくこともできます。

図2〈準備中の地域ギャラリー〉
郡山市の民俗については、今後地域ギャラリーを中心に紹介をしていきますので、どの地域にどんな資料があるのか、どんな芸能があるのかなど、地域を紹介する地域ギャラリーを楽しみにしていてください。