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vol.92 鈴木 結生さん

(クレジット:朝日新聞出版写真映像部 上田泰世)
1歳から11歳まで郡山で育ち、著書『ゲーテはすべてを言った』で第172回芥川賞を受賞した鈴木結生(すずき ゆうい)さんに、思いを伺いました。
作家人生を突き進み、いつかは福島を題材にした小説を
牧師である父の影響で聖書が身近にあり、物心ついた頃から本に親しんできました。小学1年生の自由研究で動物たちが登場する絵本を作ると、両親がすごく褒めてくれたことを覚えています。自分が作った本を世に出すことは、子どもの頃からの夢でした。
漫画を描いたり、学者になろうか考えたりしたこともありましたが、やはり作家を目指そうと、大学4年生の時に小説を書き始めました。幼少期を過ごした福島を題材に、文学史に残るすごい本を作ろうと意気込んだものの、なかなか作品を完成させられなくて苦労しましたね。新人らしく「まずは短編から」と気持ちを切り替えたことで、気負いせず書き進められるようになりました。
著書『ゲーテはすべてを言った』が芥川賞候補に選ばれた時は、家族みんなで大喜びしました。芸術性に重きをおいた純文学は出版が難しいジャンルだと言われますが、候補作ともなれば本を出すことができます。後に受賞が決まった時以上に、本を出すという夢が叶ったことがうれしくて、まさに天にも昇る心地でした。自分の本が多くの人に読んでもらえるというのは、本当に幸せなことです。
これからも本を出し続け、読者に読まれ続ける作家を目指します。一番の目標は、僕の原風景である福島を題材にした本を書くこと。これまで何度か挑戦しましたが、うまく書けませんでした。思い入れがあるからこそ、少し時間を空けて自分も成長する必要があるのだと思っています。いつか必ず完成させるので、楽しみに待っていてください。

10月25日に郡山で初の講演会を開催
(広報こおりやま2025年12月号より。内容は当時のもの。)































































