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このたび、第15代郡山市長として、郡山市政を担わせていただくことになりました椎根健雄です。市民の皆様からいただいた御信任に、心から感謝を申し上げます。同時に、郡山市という福島県内での中核都市、仙台市に次ぐ東北第2の経済規模を有する都市のかじ取りを託された責任の重さを痛感するとともに身の引き締まる思いであります。
48歳という年齢での就任は、本市における歴代最年少市長となりますが、13年余にわたる県議会議員としての経験を土台に、常に「市民目線」と「現場主義」を貫きながら、市政の進展に全力を尽くしてまいる所存であります。
私が政治の世界に入ったきっかけは、大学での農学研究や民間企業での勤務を経て地元に戻り、父の会社に入社したことに始まります。青年会議所や商工会で多くの同世代の仲間たちと関わる中で、「政治がもっと地域の声に寄り添ってくれたら」「地元の企業にもっと目を向けてくれたら」という声を数多く聞きました。その声に応えたいという思いで政治の道を志し、平成23年、東日本大震災後に福島県議会議員に初当選いたしました。
以来、県議会では、農業・防災・教育・雇用など、地域に根ざした政策提言を重ねてまいりました。特に、令和元年東日本台風の水害や福島県沖地震、コロナ禍など、幾度も災害と向き合ってまいりました。
災害現場で聞いた市民の皆様の「声なき声」を政策につなぐことの大切さを胸に刻み、今後も一貫して「現場からの市政執行」を貫いてまいります。
国におきましては、令和6年10月11日に石破内閣総理大臣を本部長とする「新しい地方経済・生活環境創生本部」が設置され、12月24日には、地方創生2.0の「基本的な考え方」を決定したところであります。この中で、「当面は人口・生産年齢人口が減少するという事態を正面から受け止めた上で、人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる適応策を講じていく」ため、「持てるポテンシャルがまだまだ眠っているそれぞれの地域の経済・社会、これらを支える人材の力を最大限に引き出す政策の強化」、「若者や女性にも選ばれる職場や暮らしを実現する政策の強化」、「都市と地方の新たな結びつき・人の往来を円滑化する政策の強化」などの取組により、すべての人に安心と安全を保障し、希望と幸せを実感する社会の実現を目指すとともに、今後10年間集中的に取り組む基本構想を取りまとめることとしております。
このような中、私は郡山市政において、3つの基本方針「選ばれるまち」、「暮らしの充実・笑顔になれるまち」、「経済の活性化」を掲げております。この3つの柱は、国の基本的な考え方にも合致しているとともに、それぞれが独立しているものではなく、互いに補完し合い、持続可能な郡山の未来を築いていくための基盤であると考えております。
本市は、安積開拓以来、開かれた自由な気風と多様性を受け入れる懐の深さによって発展してまいりました。今後、少子高齢化と人口減少が進む中においても、選ばれる都市であり続けるためには、この「郡山らしさ」をさらに磨き上げる必要があります。私は、「このまちに住みたい」「子育てをしたい」「働きたい」「戻ってきたい」と思われる郡山をつくることが、最大の地方創生に結び付くものと考えております。
「選ばれるまち」の実現に向けて、まずは喫緊の課題であるJR郡山駅西口の交通混雑対策に取り組んでまいります。郡山駅西口ロータリーにおける人流及び車両動線の改善やJR郡山駅西口周辺の横断歩道の配置など、安全性と利便性の両立に向け、警察や関係機関との連携を図りつつ、改善策としての最適解を具体化し、市の玄関口としての魅力向上に繋げてまいります。
また、開成山公園や文化・体育施設と連続する旧豊田貯水池周辺の利活用等については、市民の皆様との対話を丁寧に重ねながらその在り方を検討してまいります。
「暮らしの充実・笑顔になれるまち」の実現に向けては、市民の皆様一人ひとりが安心して暮らしを営めるよう、子育て世代、高齢者、障がいのある方など、日々の暮らしに寄り添った支援を充実させてまいります。
特に、前市政において進められてきたベビーファーストなどの子育て政策については、持続可能な形でこれを継承し、さらに発展させるとともに、子育て支援を核とした「ファミリーが住みやすいまち」の実現にも力を入れ、保育・教育・医療の連携強化、放課後児童クラブの充実など、家庭の多様なニーズに応える施策を展開してまいります。
さらに、防災・減災への備えも暮らしの安心には不可欠です。東日本大震災や近年の気象災害を教訓に、市民の皆様や関係機関との緊密な連携による防災・減災の取組、公共施設の耐震化、流域治水の推進など、ソフト・ハードの両面から地域の防災力強化に向けた施策を推進してまいります。
「経済の活性化」に向けては、「人」、「モノ」、「情報」が集まり、農商工の多様な産業がバランス良く共存する、「経済県都」としての本市の強みをさらに活かし、地元中小企業の成長支援、新たな企業の誘致、観光資源の磨き上げを通じて、持続可能な地域経済の発展を目指してまいります。
特に注目しているのが、医療・健康関連産業です。本市には優れた医療機関が集積しており、これを核とした「健康医療先進都市」としてのブランディングをさらに進めてまいります。医療系スタートアップや研究機関との連携も視野に入れ、若者が本市で働き、暮らし、家族を築く未来を支える経済環境を整えてまいります。
本市の誇る農業についても、私自身が農学を学んできた経験を活かし、郡山ブランド農産物の付加価値向上と国内外への販路拡大を支援してまいります。地産地消と輸出の両面から農業の持続可能な発展を図るとともに、農業を次世代につなぐ環境づくりにも取り組んでまいります。
私は、政治において「誠実さ」と「粘り強さ」を何より大切にしております。大学時代、大豆の開花を調べるために早朝3時から大学に通い続けたこともありました。一つのことを突き詰めてやり抜く姿勢は、政治においても貫いてきた信念であります。
市政におきましても、「現場主義」と「双方向の対話」を基本とし、市民の皆様の声を聞き、市職員の知恵を活かすボトムアップ型の運営を行ってまいります。市役所内部においても若手からベテランまで幅広い世代の意見が活かされる職場環境をつくり、市政の柔軟性と実行力を高めてまいります。
また、SNSやYouTubeなどのデジタルツールを活用し、わかりやすく・親しみやすい情報発信を行うことで、市民の皆様にとって身近に感じられる市政運営に努め、信頼と参加によって成り立つ市政を実現してまいります。
本市は、これまで多くの先人たちの努力と工夫によって発展を遂げてまいりました。そして今、まちの真価が問われる時代を迎えております。
人口減少、産業構造の変化、気候変動、社会の多様化といった複合的な課題に対し、私たちは未来を見据えた選択と行動を求められており、これらの課題の解決にあたっては、国、県との連携はもとより「こおりやま広域連携中枢都市圏」17市町村による連携強化も重要です。郡山の未来は圏域の力とともにあるという認識のもと、圏域の力を結集し、地域全体の持続可能な発展を目指してまいります。
私は、本市のポテンシャルと底力を信じております。このまちは、可能性に満ちています。市民一人ひとりが主役となり、それぞれの個性が輝く郡山を、皆様とともにつくってまいります。
「選ばれるまち郡山」を合言葉に、誰もが笑顔で暮らせる日常と、夢を抱ける未来を築くために、誠心誠意、市政運営に全身全霊で取り組んでまいります。
議員の皆様をはじめ、市民の皆様方の御指導・御協力を賜りますよう心からお願いを申し上げまして、私の市政運営に向けての所信といたします。
※令和7年郡山市議会6月定例会提案理由より一部抜粋