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Tea&Things 代表 大島草太さん
「お茶を通して地域を知り、地域と関わる」をコンセプトに、2022年に設立された「Tea&Things」。福島県の特産品であるモモやリンゴのドライフルーツと、耕作放棄地で育てたハーブをブレンドしたフルーツハーブティーを製造販売しています。
設立の経緯や取組みについてお話を伺いました。
「福島ならではの6次化商品をつくりたい!」果樹農家さんの一言がきっかけに。
大島さんは1996年栃木県生まれの28歳。
教師を目指していた福島大学在学中、川内村での実習をきっかけに起業。
様々なイベントに出展していた大島さんは、果樹農家さんから寄せられた思いに応え、フルーツハーブティーを製造販売するプロジェクト「Tea&Things」を設立しました。
「移動販売でイベントに参加していた時、果樹農家さんから摘果したものや形が歪で出荷できない規格外の果物についての相談を受けました。廃棄される果物を使って、福島ならではの6次化商品はできないだろうかと考えたのが『Tea&Things』設立のきっかけでした」と大島さん。
そこで大島さんが最初に思いついたのがフルーツティー。出荷が難しい規格外の果物を利用して福島の新たな特産品をつくろうと思い立ちます。
「フードロスの削減になり、農家さんの収入増にもなると思いました。さっそく郡山市でBar&Café Herbalist(ハーバリスト)を営む新田一也さんに相談し『ドライフルーツとハーブをブレンドしたお茶をつくってみては』とアドバイスを受け、挑戦することにしたんです」。
そんな大島さんに賛同し協力してくれたのが、母校でもある福島大学の地域実践特集プログラム・むらの大学を受講するメンバー14名。2022年3月に「Tea&Things」を設立。同年4月には耕作放棄地を利用したハーブ栽培をスタート。
さらに聖光学院高等学校の先生から「高校生も地域課題に取り組むプロジェクトに参加したい」という申し出があり、聖光学院進学探求コース5名と担当の先生が加わり活動することになりました。
ハーブ収穫を行う大学生の姿
地域の方々による作業サポート
大学生と一緒に耕運機で畑を耕す高校生メンバー
一つひとつ手作業で行うミントの苗植え
ハーブ栽培やブレンドに苦労しながらも4種類のフルーツハーブティーが完成
東京新宿で開催されたSDGsイベントGTFグリーンチャレンジデー2022や福島県観光物産館のイベントでお披露目。
「レモングラス、ペパーミント、カモミール、レモンバーベナ、スペアミント、ラベンダー、バタフライピーなど、何種類ものハーブ栽培を福島市、伊達市、田村市、川内村の畑で試してみました。畑の地質とハーブの生育に相性があるということがわかり、収穫が安定するまで苦労しました。ドライフルーツにする果物も最終的にイチゴ、モモ、リンゴ、リンゴ&モモの4つのフレーバーに絞りました。香りや味のバランスを確認しながら何度も試飲を重ね、2022年11月、ようやく納得のいくフルーツハーブティーが完成。農家さんはもちろん、いろいろな方の協力があったからこそ完成したお茶でした」。
お湯を注ぐと最初はふわっとハーブの香りに包まれて、少し時間がたつとフルーツの甘さが広がり評判は上々。無添加でノンカフェインというのも人気の理由の一つ。
4つのフレーバーティーの1つ「YASURAGI FOR YOU」は聖光学院高校の生徒が企画・制作したお茶。リンゴとモモのドライフルーツにラベンダーとスペアミントのブレンドで、売り切れるほど人気だったとか。
「販売開始から2年、現在は女性を中心にリピーターが徐々に増えています。川内村のカフェ「秋風舎」さんで扱っていただいたり、東京都内のカフェやセレクトショップからも注文が入っています。ECサイトでの販売も開始しました」。
福島大学メンバーによるイベント出展
試作中のフレーバーティー
『地域メディア型お茶ブランド』でふくしまを発信!
Tea&Thingsのお茶のパッケージには郡山市開成山公園の紅葉や、いわきの海など福島県内の風景がデザインされています。これは『地域メディア型お茶ブランド』という役割も込められているから。
「県外の人がTea&Thingsのお茶を手にしたとき、パッケージを見てこんな素敵な所なら福島に行ってみたいとか、このプロジェクトにかかわった学生達が進学・就職などで県外に行っても福島に誇りが持てるようなお茶ブランドに成長してほしい。情報発信にはInstagramやnoteを活用して、学生達が自らの感性で活動を配信しています。より多くの人に知ってもらえるとうれしいですね」。
アップサイクルを理念に新たな事業を展開
日本には昔からモノを大切にする『もったいない』精神がありますが、Tea&Thingsも”捨てられるものに価値を見出す”というアップサイクルの考え方があるそう。
「こおりやまSDGsアワードを受賞した後から、『自分の所の規格外フルーツも活用してほしい』と果樹農家さんとのうれしいご縁が増えています。当面の目標は、そういったフルーツをどんどん活用してお茶の生産量を増やして販路拡大していき、雇用も生み出していきたいです」と語る大島さん。
「現在、川内村のカヤの実、クロモジ、タチバナの香りを活かした『ジン』を製造する別事業も立ち上げている最中です。川内村の空き倉庫を借り、1階に蒸溜所、2階にはレストランバーを開店する予定。地元食材をふんだんに使ったお料理とジンやフルーツハーブティーをペアリングできる店。県内外はもちろん、インバウンドの方々にも来てもらえるようなレストランバーにしたいです」と夢は大きく膨らんでいます。
すでに大島さんのもとには「ワクワクするような仕事に携わりたい」と県外から家族で移住してきたスタッフが在中し、戦力として頑張ってくれているそうです。
地域や若者を巻き込みながら持続的な生産と消費を実現する大島さんの取組みは、まだ誰も実現したことがない新たなビジネスモデルへと広がりを見せています。これからの活躍に大いに期待しましょう!
■No.12 つくる責任 つかう責任
■No.15 陸の豊かさも守ろう
■No.17 パートナーシップで目標を達成しよう
大島さんのインタビューは、Instagramでも発信しています!