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公益財団法人湯浅報恩会 寿泉堂香久山病院
活性化推進協議会 事務局 飯村春香さん
70年前の1954年、郡山市香久池に結核療養所として開設された現在の「寿泉堂香久山病院」は独自の活性化推進協議会を組織し長年活動してきました。
その協議会が取り組むSDGs達成に向けた活動を協議会の事務局である飯村さんに伺いました。
SDGsに取り組む基となった寿泉堂香久山病院「活性化推進協議会」
委員会ごとの活動で職員の連帯と開かれた医療を
寿泉堂香久山病院のSDGsへの取り組みは「寿泉堂香久山病院活性化推進協議会」から始まりました。
この協議会の歴史は古く、1996年(平成8年)、地域の人から信頼される病院づくりと職員の連帯感を養うことを目的に組織されました。
「当院は2001年に『ISO9001』(※1)、2002年に『ISO14001』(※2)を取得しました。国連でSDGsが採択され、あらためて当院のISO14001の内容を確認したところ、SDGsの目標達成課題にいくつも当てはまるということがわかり、2020年からSDGsを病院の事業計画に取り入れて、活性化推進協議会でも取り組むことになったんです」。
様々な取組を行っている活性化推進協議会ですが、活動するきっかけは何だったのでしょう。
「始まりは夏祭りでした。担当したクライアントレク実行委員会の活動を機に、『こんな委員会もあった方がいいのでは?』という意見が寄せられ、ボランティア育成実行委員会、教育専門部、ファミリー倶楽部・・・と、少しずつ委員会が増えていきました。
現在、活性化推進協議会は10の委員会で組織され、職種の分け隔てなく全部門の職員で協力して運営しています」。
ファミリー倶楽部のいきいきサロンでの製作風景
様々な職種で構成されている活性化推進協議会
現在、この活性化推進協議会をまとめているのが飯村さんとインタビューに答えていただいた皆さん。
歴代の先輩方が続けてきたことや思いを受け継ぎ活動されています。ご苦労も多いのでは?
左から協議会事務局の遠藤さん、飯村さん、藤田さん、溝井さん
「28年も前から途切れることなく運営されてきた活性化推進協議会ですので、バトンを渡された責任の重さを感じています。中でもクライアントレク実行委員会が担当する年1回の『夏祭り』は、広報から屋台、ステージプログラムまで職員一丸となって手作りで行っています。開かれた医療、患者さんや地域の皆さんと交流を図るイベントとして認知されるようになり、家族連れで楽しんでらっしゃるのを見ると、とても達成感を感じています」。
やぐらの上で太鼓を演奏
スタッフ全員黄色Tシャツで一体感を感じながらの祭り準備
SNSなどのデジタル化を強化し情報を発信!
若手職員が成長し活躍したコロナ禍
イベントと並行し地域貢献活動の一環として開催していた「家庭医学講座」や、社会福祉協議会と連携しての「いきいきサロン」。2020年の新型コロナであらゆる活動を縮小させざるを得ませんでした。
「事業計画にSDGsを取り入れ、これからという時でしたので方向性を失い途方にくれましたが、インスタグラムやフェイスブックなどSNSへシフトし情報発信強化に努めることにしたんです。面会が難しかった患者さんのご家族向けに動画などを投稿し安心をお届けしました」
「現在も若手社員が率先してSNSで当院の活動について情報発信を行っています。患者さんのご家族はもちろん、外部の医療従事者や介護施設の方も見ていただいています。徐々にフォロワーも増えコメントをくださる方も…。コロナ禍が明けた現在はデジタル活用が進み、若手の成長を感じています」
SNSで情報を発信する協議会事務局の溝井さん
色分けコンテンツで分かりやすいインスタグラム投稿
美味しく楽しく環境に優しいお食事を!
食品残渣低減の取組や地域貢献活動でSDGsに貢献
「入院患者さんにとってお食事は楽しみの一つでもありますが、当院では美味しく楽しく、そして環境に優しいお食事を目標に、食品残渣低減を掲げています。毎日の残渣量を測り、毎月喫食率調査結果としてランキングを発表。人気のメニュー、残渣が多かったメニューの組み合わせを調べ、患者さんにアンケートをお願いして嗜好調査も行い、次の献立作りにつなげています。中でも季節を感じるスペシャルメニューや行事食は患者さんに大変好評で、少しずつですが残渣率が減りSDGsにつながっている取組の一つだと感じています」
食材調達に関しても地産地消を意識。新鮮な地元のものを選び、お米は無洗米を使用。廃油も回収し環境負荷低減に配慮。院内の調理は業者委託ではなく職員による手作りで、長期療養の患者さんの満足度も高いそうです。
管理栄養士によるミールラウンド(※3)の様子
彩り豊かなクリスマスメニュー
デイケアで毎日提供される手作りのおやつ
「こおりやまSDGsアワード取ったぞ!」と喜びに沸いた瞬間
受賞は次のステップへの励みに
第2回こおりやまSDGsアワードに応募するきっかけは、スタッフの「こんなのあるんだね」というひと言。活性化推進協議会として地道にやってきた活動を何かの形で表現したいと、挑戦の気持ちで応募したそうです。
「受賞の知らせが来た時は『アワード取ったぞ!』と病院中が沸き立ったのを覚えています。あらためて職員一人ひとりがSDGsに興味を持ち、前向きにもっとやっていこうという一体感が生まれた瞬間でした」
コロナが落ち着いた現在、寿泉堂香久山病院活性化推進協議会の次のフェーズはシニア世代の健康課題の解決。無料で誰でも参加できる「家庭医学講座」を開催し、予防への意識を高める取組を始めています。
「当院ではこれから『二次性骨折予防』活動に力を入れていく予定です。特に高齢の女性の方はホルモンなどの影響もあり骨粗鬆症になる方が多く、転倒・骨折し、治ってもまた骨折をしてしまい(二次性骨折)、その過程の中で寝たきりになってしまうというケースも稀ではありません。これはQOL(=生活の質)にもかかわる大きな問題になっています。
骨粗鬆症は早期発見が何よりも大切。当院には8名の骨粗鬆症マネージャーが在籍し、家庭医学講座等を通じて骨粗鬆症予防の大切さをお伝えしています。地域の皆さんがこれからも健康で安心して生活できるように周知していければと思っています」。
軽運動を交えた理学療法士の講演
管理栄養士による「骨によい食事」の講演
長年にわたり『経済』『社会』『環境』において持続可能なまちづくりに貢献することを掲げてきた寿泉堂香久山病院。これからも「健康」を軸に、地域住民との交流を図り、信頼される病院づくりを推進されていくことでしょう。
「健康は一日にしてならず。」住民一人ひとりが生活習慣を見直し、病気を予防する意識を高めたいものです。
(※1)ISO9001:品質マネジメントシステムに関する国際規格です。
(一貫した製品・サービスを提供し、顧客満足を向上させるためのマネジメントシステム規格)
(※2)ISO14001:環境マネジメントシステムに関する国際規格です。
(環境を保護し、環境パフォーマンスを向上させるためのマネジメントシステム規格)
【出典】一般財団法人日本品質保証機構
(※3)ミールラウンド:食事提供において、多職種が協力して観察を行い、食事の摂取状況から咀嚼能力や口腔機能、嚥下機能、姿勢などを評価する活動です。
■No.2 飢餓をゼロに
■No.3 すべての人に健康と福祉を
■No.12 つくる責任 つかう責任
■No.13 気候変動に具体的な対策を
寿泉堂香久山病院の皆さんのインタビューは、Instagramでも発信しています!