本文
ノボ ノルディスク ファーマ株式会社 郡山工場
ビジネスサポート部 二瓶佳奈子さん
北欧デンマークに本社を置く「ノボ ノルディスク」は、世界9ヵ国に生産拠点を持つ世界有数のヘルスケア企業。1980年に設立された日本法人「ノボ ノルディスク ファーマ」もその一つです。今回は1998年に創業した郡山工場のビジネスサポート部 二瓶佳奈子さんにSDGsの活動内容を伺いました。
ヘルスケア企業として一人でも多くの患者さんを救いたい!
デンマークで創業した「ノボ ノルディスク」は、糖尿病及び肥満症、希少血液疾患などの医療用医薬品や医療機器の開発、輸入・製造・販売を行っている企業。郡山工場では錠剤の一次・二次包装や注射剤の二次包装を行っています。
「ノボ ノルディスクのパーパス(※1)は、糖尿病で培った知識や経験を基に、変革を推進し深刻な慢性疾患を克服することです。営利追及の前に、一人でも多くの患者さんを救うことが目標です」と二瓶さん。
郡山工場SDGs推進メンバーの二瓶さん
そんな世界規模のノボ ノルディスクは1994年に初の環境報告書を発行。2004年から経営原則にサステナブルビジネスアプローチを組み込むなど、非常に早い段階から持続可能なビジネスを推進しています。
「郡山工場は15年以上、産業廃棄物のリサイクル率は96%を維持しています。現在はさらに処分方法を見直し、焼却していた廃棄物はサーマルリサイクル(※2)へ、サーマルリサイクルはマテリアルリサイクル(※3)へ、マテリアルリサイクルは再利用へと移行を進めているところです」
SDGsを推進するメンバーは、工場長の指揮のもと二瓶さんを含め各課から選任された労働安全衛生に携わる6名です。具体的にはどんな施策を行っているのでしょうか?
「工場の廃棄物の60%を占める紙類は以前からマテリアルリサイクルをしていましたが、現在は廃棄プラスチックにも着目し取り組んでいます。当社の錠剤の包装シートはプラスチックにアルミが混ざったものでリサイクルしにくい素材でしたが、再生アルミへリサイクルできる業者さんが見つかり買い取りをお願いしています。
また、不良製剤は分解後ペレット化し、再生プラスチックの原料にしています。こういったマテリアルリサイクルの事例は、CO2排出量削減と郡山市の廃棄物削減に寄与すると同時に、パートナー企業との協働の実現やB型支援事業所の雇用創出といった、関係するすべての人が幸せになる取り組みだと感じています」と二瓶さん。
B型支援事業所の障がい者雇用も促進
オーダー機器を使用したマテリアルリサイクル
海外施設へ不要になったものを提供
こども食堂へ不要家具の提供
ほかにも不要になった家具をこども食堂へ寄付したり、実験器具を高等学校へ提供するなど、地域貢献も積極的。「ありがとう」という言葉は大きな励みになるそうです。
2020年、敷地内に太陽光発電設備を導入し
100%再生可能エネルギーの郡山工場
「郡山工場では『オンサイトPPA』(※4)を活用し、太陽光発電設備を導入。発電した電力を自家消費し環境負荷を低減してきました。自家発電でカバーしきれない電力は、いつ、どこで、誰によって発電されたかがわかる証書(トラッキング付きFIT非化石証書)を組み合わせた電力を使用し、工場のオペレーションで使用されるエネルギーの100%再エネルギーを継続しています。さらに社有車に電気自動車を導入し化石燃料低減も進めています」
2020年4月に導入した太陽光発電設備では、工場の屋上はソーラーパネルだけでなく、遮熱塗装を施工し工場への太陽熱を防ぐことでガスの使用量を大幅に削減しました。2025年4月からはフレキシブルソーラーパネルを設置し自家発電への切替が計画されています。また、新社屋を作るときのガイドラインも制定され、2027年操業開始予定の郡山新工場のエネルギーに関しても、ガスの使用を廃止しすべて電気でまかなう予定とのことです。
郡山工場の太陽光発電設備
屋上ソーラーパネル
「リサイクル」、「再生可能エネルギー」、「労働環境の取組」が
こおりやまSDGsアワード受賞につながった
ノボ ノルディスク ファーマは社員の労働環境にも力を入れ、日本法人はGreat Place to Work® Institute Japanが実施する、2024年版「働きがいのある会社」(※5)に認定。3年連続で認定されています。郡山工場も常に働きやすい環境を模索、魅力的な工場づくりを目指しています。
「社員食堂の食事は低価格で提供し飲み物はすべてフリードリンク。勤務時間はフレックス制を導入、男性の育休取得率も100%です。女性が出産し育休から戻る割合も高く、定着率も高い数字を維持しています」
「国際化を推進しているため、現在デンマーク、アメリカ、中国、韓国、イスラエルなど外国籍の社員も働いています。多様性を受け入れることの大切さを理解し、ミーティング、コミュニケーションスペースなどを設け、いろいろなアイデアが生まれる価値観を重視しています。リモート会議環境も整え、移動によるCO2排出量削減につなげています」
郡山工場では12年間、休業労災0件を継続中。2022年には厚生労働省から「安全衛生に係る優良事業場、団体又は功労者に対する厚生労働大臣表彰」の奨励賞を受賞しました。
社員の健康増進を視野に、工場内にはトレーニングジムやマッサージチェアを設置。従業員がリフレッシュできる場を提供。こういった細部まで徹底した社員ファーストの考え方はSDGsに本気で取り組むプライドを感じます。
オープンな空間のコミュニケーションスペース
個室ボックススペース(Tele Cube)
工場内に本格的なトレーニングマシーンを設置
第5回こおりやまSDGsアワード表彰式にて
(写真中央:浅見隆二工場長、右:石木康史さん、左:二瓶佳奈子さん)
「インスリン製剤を扱うノボ ノルディスク ファーマの工場は、日本でもここ郡山市にしかなく、在庫が切れてしまったら命に関わる患者さんも出てしまうかもしれない…。そして、どんなにいい製剤を作ったとしても、環境破壊や労災が多い工場だったら、薬を使う患者さんは不安だと思うんです。私達は常に患者さんの立場に立って危機意識を持ちながら社員の働く環境と労働安全にも取り組んでいます」
「リサイクルや再生可能エネルギー問題、働きやすい環境と国際化の推進など、行動してみると新たなスキームや繋がりが生まれました。その結果がこおりやまSDGsアワードの受賞につながったと感じています。デンマークやフランス、ロシアにある世界の工場の先駆けとして郡山工場はこれからもSDGsを推進していきます」と二瓶さん。
循環型ビジネスの改善と人財確保に注力
ノボ ノルディスク ファーマ郡山工場はこれからも、『Circular for Zero Factory』という評価基準を設け、エネルギー、廃棄物、水、購買の4つのテーマを中心に、循環型ビジネスの改善活動を行っていくそうです。
二瓶さんは、「SDGsの活動を通して若い方に、郡山市にはこんなグローバルな企業があるというのを知ってもらいたい。大阪万博にノボ ノルディスク ファーマが出展しますので、ぜひブースに立ち寄っていただきたいですね」と熱く語ってくれました。
SDGsを先駆けて牽引する企業ノボ ノルディスク ファーマ。その郡山工場も2027年の新工場操業開始に向け、共に働く人財の確保に力を注いでいきたいとのことでした。さらなる躍進に期待しましょう。
(※1)パーパス
企業の社会的な存在意義を意味する言葉
(※2)サーマルリサイクル
廃棄物を燃焼させ、その過程で発生する熱エネルギーを回収して利用するリサイクル方法
(※3)マテリアルリサイクル
廃棄物を材料として再利用し、新しい製品を製造するプロセス
(※4)オンサイトPPA
発電業者が需要家の敷地内に太陽光発電設備を発電業者の費用で設置し、所有・維持管理した上で発電設備から発電された電気を需要家に供給するしくみ
(※5)「働きがいのある会社」
働く人へのアンケートの結果を基に、優れた職場文化に基づいた「働きがいのある会社」であることをGreat Place to Work® Institute Japanが正式に認定するもの。
■No.7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
■No.8 働きがいも経済成長も
■No.10 人や国の不平等をなくそう
■No.12 つくる責任 つかう責任
■No.13 気候変動に具体的な対策を
二瓶さんのインタビューは、Instagramでも発信しています!