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有限会社ちから寿し
フローズンちから工場責任者 佐久間美稀 さん
有限会社ちから寿しは、須賀川市長沼に店を構える寿司店。飲食業を中心に、インターネット販売による冷凍寿司事業にも力を入れています。有限会社ちから寿し フローズンちから工場責任者の佐久間美稀さんに、地域に根ざしたSDGsの取り組みを伺いました。
コロナ禍に食品ロス対策で生まれた冷凍寿司
今年で創業56年の「ちから寿し」は長年、須賀川市長沼で愛されてきた老舗寿司店。2022年に冷凍寿司部門の「フローズンちから」がスタート。冷凍寿司開発の背景には、地域ならではの課題と、新型コロナウイルスの蔓延があったそうです。
「本格的に新型コロナウイルスが流行し自粛が叫ばれたころ、当店でもお客様が激減し、仕入れた食材を使い切れず、大量の食品ロスが発生してしまいました。せっかく仕入れた食材を無駄にしてしまう悔しさに『このままではいけない、何とかしなきゃ』という想いが、食品ロス削減を考えるきっかけになりました。」
昭和44年開業の老舗「ちから寿し」
新型コロナ終息を祈り様々な取り組みを実施
コロナ禍前も、「遠方に住む孫や親戚に、ちから寿しの味を届けたい」といった声をよく聞いていたという佐久間さん。「寿司を冷凍すれば、遠方に送る事もできるし、食品ロス削減も叶えられるのでは」と社長に提案。
一方で、冷凍寿司には大きな不安もあったという佐久間さん。冷凍食品には、「妥協した味」「品質が落ちる」というイメージが根強く、“生食”の価値や美味しさを大切にしてきた「ちから寿し」にとっては、店の価値を落としかねない大きな挑戦だったからです。
「何度も社内で話し合いを重ねる中で出会ったのが、一台のリキッドフリーザーでした。アルコール液に浸しマイナス30度で瞬間冷凍するこのフリーザーは、凍結時間を極限まで短縮することで食材の細胞を壊さず、解凍後もドリップが出にくく、生の寿司と遜色ないおいしさを保つ画期的なものでした。」
「自然解凍してひと口食べた瞬間、生と遜色ない美味しさに驚き、冷凍寿司は妥協ではなく、食品ロスを減らすための“希望の技術”へと認識が変わりました。」

冷凍寿司部門「フローズンちから」セントラルキッチン

フリーザーによるチラシ寿司瞬間冷凍
須賀川市のふるさと納税の返礼品に登録
地域活性化にも貢献
こうして誕生したちから寿しの冷凍寿司は、「食べたいときに、食べたい場所で寿司を楽しめる」商品として、多くの人に喜ばれ、もう一つの事業として成長。
須賀川市のふるさと納税返礼品にも選ばれ、クール便の箱には須賀川市のPR文やマスコットキャラクター「ボータン」を印刷し、地域の魅力発信にも貢献しています。
「郡山市の百貨店のお中元・お歳暮カタログや家庭画報のお取り寄せカタログ、楽天市場などにも掲載され、全国から注文が入るようになり、少しずつリピーターの方も増えています。県外にいるお孫さんや親戚に食べさせたいという地元の方に喜ばれているのがうれしい。」と佐久間さん。

ふるさと納税返礼品「寿司詰合せセット」

地域の魅力も発送箱に印刷
こおりやまSDGsアワード受賞で強まった食品ロス削減の意識
新たな冷凍商品開発も
ちから寿司の食品ロス削減の取り組みは、冷凍寿司だけにとどまりません。マグロの筋は捨てずにシーチキンとして加工。血合い部分は小鉢料理として提供するなど、食材を「最後まで使い切る」工夫を日常的に実践しています。寿司店として日々出る端材を「食品廃棄物」としてではなく、「まだ価値のある資源」として捉え直す姿勢が、現場に根付いているそうです。
「SDGsアワード受賞をきっかけに、スタッフの意識も大きく変化しました。自分たちも何かできるのではないかという想いから、冷凍卵焼きの提案があり、実際に店舗限定商品として販売を開始するという相乗効果もありました。」
冷凍食材は、食材価格が安定している時期に仕込みができるため、経営面でもロスを減らすメリットがあります。「捨てない」「無駄にしない」「活かし切る」という考え方が、経営と環境配慮の両立につながっています。
また、ちから寿しでは冷凍寿司用の容器にもこだわり、世界一成長が早い木材といわれるファルカタを使用しています。ファルカタ材は東南アジアのマメ科の植林木で5~8年で伐採可能。成長過程で二酸化炭素を吸収。桐のような白さで、アクも出にくく食品容器にも適しています。
「当店の冷凍寿司を食べ終わり、その容器が万が一風に飛ばされてしまっても、自然に土に還るエコ素材というのが気に入って使用を決めました。」
「フタ部分に“ちから寿し”の焼き印を施し、温もりや本物感を演出しています。寿司は晴れの日のお祝いで食べる方も多いと思うので、箱を開けた時のワクワク感も大切にしています。」
スタッフ提案の冷凍卵焼き(調理例)
エコ素材でつくられた容器を使用
仕入れは地域の生産者から
一次産業を支援していきたい
飲食店は地域や一次産業との連携も重要な柱です。ちから寿しではシャリに使うお米は天栄村産を使用し、きゅうりやネギなどの野菜は長沼地区の農家から直接仕入れています。
魚介類は郡山市総合地方卸売市場や豊洲市場から必要な分だけを仕入れ、過剰仕入れをしないことを徹底。漁業者・農業者の努力で育てられた食材を無駄にせず使い切ることも、食品ロス削減の大切な一歩だと考えているそうです。

天栄村のお米農家さん農地にて(桑名社長)

食品ロス削減に向け試行錯誤する佐久間さん
「今後は海外輸出も視野に入れ常磐物、郡山の鯉などを使った商品の開発や、福島の寿司文化を世界へ発信する構想も描いています。過疎地域にある小さな寿司店でも、やればできるという姿を示すことが、地域の誇りと希望につながると信じています。」と佐久間さん。
日本の年間の食品ロスの量は、国民が一人当たり毎日おにぎり一個分を捨てているのと同じ規模。有限会社ちから寿しの取り組みは、食の現場から未来を変えていく実践的なSDGsモデルです。“もったいない”を“おいしい”に変える挑戦は、これからも続いていきます。

有限会社ちから寿しが貢献するSDGs(持続可能な開発目標)のゴール
■No.8 働きがいも経済成長も
■No.11 住み続けられるまちづくりを
■No.12 つくる責任つかう責任
■No.14 海の豊かさを守ろう
■No.15 陸の豊かさも守ろう
佐久間さんのインタビューは、Instagramでも発信しています!